【大企業撤退の波紋】ホンダ スウィンドン工場閉鎖の影響 地元住民が抱く不安

公開 : 2021.07.07 11:25

ホンダは7月に英スウィンドン工場を閉鎖します。記者は、一大雇用主の撤退に揺れ動く地元を訪れました。

同等の条件の仕事は少ない

大企業が撤退すると、その町や人々はどうなるのか?多くの企業がこの問題に直面してきたが、今まさに、その渦中にある自動車メーカーがある。7月末にスウィンドン工場を閉鎖するホンダだ。

英国ウィルトシャー州の南東に位置し、旧サウス・マーストン飛行場に建てられたこの工場は、1985年にオープンした。これは、スウィンドンの歴史の中で大きな出来事だった。当時、英AUTOCAR編集部のジョン・エバンス記者は、そこから16km離れたサイレンセスターに住んでいた。

ホンダのスウィンドン工場
ホンダのスウィンドン工場    AUTOCAR

記者の友人の何人かは工場で高給の仕事を得て、出世街道を歩むことができるという期待に胸を膨らませていた。彼らがそのまま働いていたとしたら、今頃、定年を迎えようとしているだろう。

残念なことに、入社したばかりの若い従業員にとって、工場の閉鎖は大きな痛手だ。スウィンドンには、ホンダほどの労働条件、キャリアアップ、給料を提供する企業はほとんどない。

工場のセキュリティフェンスの外側には、工場を支える人々や企業がいる。大手部品メーカーから、道端の小さなカフェまで、工場閉鎖の影響を受ける人たちがいる。彼らの未来はどうなるのか?それを知るために、記者はスウィンドンを訪れた。

ホンダが育てた人材は有益

text:John Evans(ジョン・エバンス)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

ホンダの工場から800mほど離れた場所にあるスーパーマリン・スポーツ・アンド・ソーシャル・クラブに立ち寄ると、雨が降っていた。そこへ、1台のバンが現れた。それは地元の害虫駆除業者で、彼は不満そうだった。

「ホンダの工場が閉鎖されると、業者が急増し、既存の業者と競合することになる」と彼は言う。

スウィンドン取材風景(1)
スウィンドン取材風景(1)    AUTOCAR

「ホンダは電気や配管など、さまざまな職業のトレーニングを用意している。労働者は、2週間後には仕事を覚えたつもりで工場を後にする。もうすでに、ホンダで働いていた人がわたしよりも安い料金でネズミを駆除してくれた、と言ってくる人もいるんですよ」

しかし、彼の話を聞いて、工場閉鎖はスウィンドンのある人々にとっては脅威だが、別の人々にとってはチャンスなのではないかと思うようになった。その数分後、クラブからクルマで少し離れたサウス・マーストン工業団地で、ある人材紹介会社を見つけたのだ。オペックス・パーソネル社は1年半前にオープンしたばかりだが、これ以上ないほどのタイミングであった。

「仕事の数は人の数よりも多く、問題となっています」と、地域マネージャーのアシュレアは言う。2月、他の2つの地域機関とともに、オペックスはホンダ工場で働く3400人のスタッフに採用説明会を行ったところ、ほとんどのスタッフが十分な訓練を受けており、自分の役割を果たしていることがわかったという。

「ホンダを去る人材の能力は驚異的であり、その閉鎖は他の企業にとっても有益です。スウィンドンの強みは産業用物流であり、この分野の将来は明るいと言えます。しかし、給料に関しては現実的に考える必要があるでしょう。すべての企業がホンダほど給料が高いわけではありませんから」

人より仕事が多い?それは話がうますぎる気もする。しかし、ただフォークリフトを運転していても、キャリアアップや高給は望めないようだ。地元のメルセデス・ベンツ・トラックのディーラー(きっと忙しいのだろう)のすぐ近くに、TJ’s Cafeがある。店主のリンダ(スタッフからはママと呼ばれている)によると、ホンダで運転免許を取得した人は、簡単にアマゾンで仕事が見つけられるという。

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