【大企業撤退の波紋】ホンダ スウィンドン工場閉鎖の影響 地元住民が抱く不安

公開 : 2021.07.07 11:25

低賃金の雇用が増える?

オンライン小売業の巨人であるアマゾンは、オックスフォードへ向かうA420号線から1.6kmほど離れたシンメトリー・パークに約4600平方メートルの倉庫を新たに借り入れ、1300人の雇用を約束すると発表したばかりだ。

この土地を開発したのは、先日150万平方メートルのホンダ工場の買収を発表したばかりのパナトーニ社だ。米不動産開発大手のパナトーニ社は、地元企業を支援するために7億ポンド(約1070億円)を投資して、この土地を再生することを約束している。

スウィンドン取材風景(2)
スウィンドン取材風景(2)    AUTOCAR

市の議員たちはこの動きを歓迎しており、スウィンドンに多くの熟練した雇用と企業の組み合わせをもたらすだろうと言っているが、リンダは納得していない。

「倉庫が増えるだけよ。ドライバーはもっと必要になるでしょうね」

偶然にも、外で休憩中のアマゾンのドライバー2人に話を聞くことができた。そのうちの1人、レイは、かつてホンダが所有していたTDG社(スウィンドンの生産ラインに部品を納入していた会社)で、1980年代から1990年代にかけて6年間、余剰人員となるまで働いていた。

「僕はフォークリフトの運転手として給料をもらっていたんだ。その後もいろいろな仕事をしたけど、この前のロックダウンでは、自営業でアマゾンのバンドライバーになった」

「僕が心配しているのは、市場に出てくる未熟練労働者と、パナトーニがどんな雇用を生み出すかだ。倉庫を増やす必要があるんだろうか?」

他業種にも波紋広がる

ここで1つのテーマが浮かび上がってきた。地元の教区委員長に聞けば、もっと良いニュースが聞けるのかもしれない。コリン・マクウェンに連絡を取り、サウス・マーストン村の自宅近くで会う約束をした。

「この町の最大の雇用主は(住宅金融大手の)ネーションワイド社なので、ホンダの閉鎖は波紋を呼ぶでしょう」と彼は言う。

スウィンドン取材風景(3)
スウィンドン取材風景(3)    AUTOCAR

「重要なのは、この閉鎖が生む機会です。スウィンドンのプランナーたちは長い間、ケンブリッジ、ミルトン・ケインズ、オックスフォード、ブリストルと連携したハイテク・サイエンスパークを町内に建設することを話し合ってきました」

「ホンダの跡地に集中させて、そこからオックスフォードやニューベリーに進出することもできますが、わたしが心配しているのは、パナトーニ社が低技能・低賃金の仕事を提供する倉庫を増やしてしまうのではないかということです」

6km離れたハイワースという町には、ホンダに納入している自動車用シートのメーカー、TSテック社がある。これまでと同様に記者は落胆したが、それには別の理由がある。ブラックワース工業団地には同社の建物が建ち並び、道路には従業員が乗るホンダ・シビックが並んでいる。受付の建物を探そうとすると、フェンス越しに従業員の姿が目に入った。

「7月に解雇されることになったんだ」と彼は言う。

「少し前までは、1日に400台のシートを作っていたけど、ホンダが閉鎖すると発表したとき、次は自分たちだと思った。何をしたらいいのかわからない」

受付には、シビックだけでなく、フォルクスワーゲン・トゥーランの3列シートまで製造していることを祝うプレートが飾られている。インタビューを申し込んだところ、受付の内線電話から人事部の男性の声が漏れ聞こえてきたが、結局応じてはくれなかった。

「多くのホンダの従業員は新しい仕事を見つけられるだろう」と友人は言う。

「だけど、今回の閉鎖は一部の人々に深刻な影響を与えている。とても困難な状況で、一部の人々にとっては状況がさらに悪化することになる」

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