【黒人割合は1%未満】ルイス・ハミルトン F1多様性向上で10の提言 社会問題にも言及

公開 : 2021.07.14 19:05  更新 : 2021.07.14 19:56

モータースポーツ界の多様性向上を目指す「ハミルトン委員会」が、10か月に及ぶ調査結果を発表しました。

多様性と包括性の向上目指す

text:Joe Holding(ジョー・ホールディング)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

昨年、7度のF1ワールドチャンピオンに輝いたルイス・ハミルトンが設立した「ハミルトン委員会」は、英国のモータースポーツ業界における黒人の割合についての報告書を発表した。

英国王立工学アカデミーの協力を得て、専門家からなる同委員会は、10か月をかけて、業界における黒人の割合が低い理由と、多様性を向上させる方法を検討してきた。

ルイス・ハミルトン
ルイス・ハミルトン

委員会の推計によると、F1で雇用されている人のうち、黒人やマイノリティーの人種的背景を持つ人は1%にも満たず、こうしたスタッフへのインタビューでは、職場の文化に問題があることが明らかになった。

また、報告書では、黒人学生のSTEM(科学、技術、工学、数学)科目の履修状況や、教職に就いている黒人のロールモデルの不足など、社会的な問題も取り上げている。

報告書では、以下のような10の提言をおこなっている。

1、F1チームのためのダイバーシティ(多様性)およびインクルージョン(包括性)に関する憲章
2、黒人学生のSTEM科目の学習を奨励するためのベストプラクティス・ガイダンスの策定
3、モータースポーツ関連企業での実習や職場体験の改善
4、学校の人種差別撤廃に関する憲章
5、学校から排除される黒人学生の割合を減らすための新しい基金
6、STEM科目を教える黒人教師の数を増やすための新しい方法の試行
7、黒人コミュニティグループが主導する学校でのSTEM活動への支援強化
8、学生やスタッフに関するデータへのアクセス改善
9、黒人学生の高等教育への進学を支援するプログラム
10、学位レベルの教育を受けた黒人学生をモータースポーツの専門職に結びつけるための奨学金制度

待ち望まれていた変化のきっかけに

ルイス・ハミルトンは、今回の報告に関して次のコメントを発表している。

「わたしは、ハミルトン委員会の報告書『Accelerating Change』を王立工学アカデミーと共同で発表できたことを誇りに思います」

F1グリッドでは、多くのドライバーがレース前に膝を付き、人種差別への抗議の意思を示す光景が見られた。
F1グリッドでは、多くのドライバーがレース前に膝を付き、人種差別への抗議の意思を示す光景が見られた。

「この報告書を通じて、モータースポーツ業界が真に代表的な存在であることを妨げているものについて、より明確な理解が得られたと感じています。わたし達の10の提言は、これらの問題を解決し、長い間待ち望まれていた変化をスポーツにもたらす最初のステップになると信じています」

ハミルトンは、F1に参戦した唯一の黒人ドライバーであり、カートに乗っていた若い頃に人種差別を受けた経験から、長年にわたりモータースポーツの多様性の向上を提唱してきた。

この報告書を受けて、FIA会長のジャン・トッドは次のように述べている。

「ダイバーシティとインクルージョンは、FIAが規約や倫理規定などを通じて取り組んでいる重要な課題の1つです。ルイス・ハミルトンとハミルトン委員会の広範な報告書を称賛します」

「FIAは、彼のリーダーシップと、今後慎重に検討される報告書に含まれる深い分析を歓迎します」

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