ボルボ、EV生産に巨大鋳造機械導入 「テスラ流」戦略で電動化に弾み コスト面でメリットも

公開 : 2022.02.09 06:25

ボルボは自社最大の工場を改修し、新たな製造プロセスとしてメガキャスティングを導入すると発表しました。

スウェーデンの工場改修 電動化に備え

ボルボは、EVへの完全移行に備え、8億ポンド(約1250億円)以上を投じてスウェーデンの工場を改修すると発表した。バッテリー組立工場やアルミニウム部品を製造する新技術を導入する予定だ。

2030年までに全車種EV化を目指すボルボは、今後数年間でスウェーデン・トースランダにある同社最大規模の工場をアップグレードし、その一環として、「メガキャスティング」と呼ばれるアルミ部品の製造プロセスを導入する。同社によると、持続可能性、コスト、車両性能の面で「多くのメリットを生み出す」という。

ボルボのトースランド工場
ボルボのトースランド工場

メガキャスティングは、テスラがコンパクトクロスオーバーのモデルYの製造にも使用しているプロセスで、自動車の主要部品を(複数の小さな部品ではなく)1つのアルミニウム部品として製造するものだ。

ボルボは、このプロセスによって「エネルギー効率が向上し」、室内とラゲッジのスペースをより有効活用できるようになるとしている。同社の車両プラットフォーム設計者であるミカエル・フェルメールは、AUTOCARに次のように語った。

「当社が手始めに検討しているのは、リアフロアを鋳造することで、100の部品を1つにまとめるというものです。製造の複雑さを軽減するなど、明らかな利点があります」

「わたしが本当にエキサイティングだと思うのは、設計の柔軟性です。あらかじめスケーリングが決まっている従来のプラットフォームでは不可能な、あらゆる車両やセグメントに製品を最適化でき、まったく新しいことが可能になるのです」

トースランダ工場には、バッテリーセルとモジュールを車両のフロア構造に組み込むバッテリー組立工場が新設される。また、物資の搬入エリアや塗装工場も改装され、いずれもエネルギー消費と排出量削減に貢献すると期待されている。

ボルボのホーカン・サミュエルソンCEOは、「これらの投資により、当社は電動化の未来に向けて重要な一歩を踏み出し、さらに高度で優れたEVに備えることができます」と述べている。

「トースランダは、ボルボ最大の工場であり、2030年までに純粋なEVメーカーとなることを目指す当社の継続的な変革において、重要な役割を果たすことになるでしょう」

無駄を減らすメガキャスティング

AUTOCARはボルボの車両プラットフォーム設計者、ミカエル・フェルメールにインタビューを行った。

――ボルボにとって、なぜメガキャスティングがこれほどまでにエキサイティングな技術なのでしょうか?

「当社が手始めに検討しているのは、リアフロアの鋳造で、100の部品を1つにまとめるというものです。製造の複雑さを軽減するなど、明らかな利点があります

ボルボはメガキャスティング技術でコスト削減と技術革新を狙っている。
ボルボはメガキャスティング技術でコスト削減と技術革新を狙っている。

「わたしが本当にエキサイティングだと思うのは、デザインの柔軟性が得られることです。従来のプラットフォームでは、どのように長くするか、どのように高くするかなど、あらかじめ決められたスケーリングがありましたが、これ(メガキャスティング)によって、あらゆる車両やセグメントに対して製品を最適化できるようになり、まったく新しいことが可能になるのです」

「この柔軟性が、電動化に向かう今、特に重要であり、技術的な進歩が期待されます。適応できるようなアーキテクチャーを持つことは良いことです」

――環境への影響を減らすのにどのように役立つのでしょうか?

「当社にとって非常に重要なことです。素材を見ると、スチールのフロアとアルミのメガキャスト・フロアを比較した場合、CO2排出量を約35%削減できることがわかります」

「考えるべきことがいくつかあります。まず、アルミの二次加工をできるだけ多くしたい。50%を目標にしています。リサイクルアルミを最大100%使用した合金も検討していますが、まだ当社の基準には達していません。二次アルミニウムは重要です」

「また、一次アルミニウムは、低炭素アルミニウムを供給できるサプライヤーからのみ調達しています。基本的には、アルミニウム1kg当たりのCO2排出量が4kg以下のものです」

「生産施設に入ると、材料利用率はほぼ100%になります。搬入した材料はスクラップなしで部品となり、切り落とされたものはすべて炉に戻されます。スチールの場合、約45%のスクラップを再溶解する必要があるのですが、それとは全く違います」

「最後に、自動車のライフサイクルが終わったときには、この大きなアルミニウムの塊は大きな資産として材料を再利用できます」

――このプロセスはいつから始められるのでしょうか?

「メガキャスティングは、2020年代の半ばには生産へ移行する予定です」

――こうして作られた部品は、車両性能や走りにどのような影響を与えるのでしょうか?

「あまり大きな違いは見られないと思いますが、重量が少し減ります。剛性に関しては、当社の要件を満たしているので、スチール製でも同じでしょう」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・ウォリック

    Jack Warrick

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事