ボディは段ボール? シトロエン 質素で都会的なEVコンセプト「OLI」公開 

公開 : 2022.09.30 18:45

シトロエンは、新しいEVコンセプト「OLI」を公開しました。ボディの一部に紙を使用したり、バンパーを前後共通のものにしたりするなど斬新な工夫が施されています。

将来の市販車につながるコンセプトカー

シトロエンは新しいEVコンセプトカー「OLI」を公開した。手頃な価格帯の小型EVを示すモデルで、公道走行可能ではあるが市販化の予告はない。

約2万5000ユーロ(約350万円)の価格を想定し、車重約1000kg、小型の40kWhバッテリーとシングルモーターを搭載し、航続距離は400kmとされる。このコンセプトカーにおける最大の特徴は、コスト削減と環境負荷の低減を狙った設計にある。

シトロエンOLIコンセプト
シトロエンOLIコンセプト    シトロエン

フロントバンパーとリアバンパーは、まったく同じ部品だ。金型が1セットで済むため、製造や修理のコストを削減でき、環境負荷の低減にもつながる。また、50%の再生材を使用しており、100%リサイクルが可能。

また、通常のEVでは、空気抵抗を少なくするためにフロントガラスは斜めに寝かせることが多い。しかし、OLIコンセプトでは垂直かつフラットな形状とし、素材と製造のコストを大幅に削減している。とはいえ、空力を無視しているわけではなく、ヘッドライトとボンネットに設けられたダクトから、フロントガラスの上に空気を導き、空気抵抗を軽減しているという。

ルーフとボンネットは、スチール製ではなく、特殊な段ボールで作られている。紙と聞いて不安に思われるかもしれないが、BASF社のハニカムパターンを採用することで、上に立つことができるほどの強度を実現。さらにコーティングを施すことで、雨や紫外線をシャットアウトし、耐久性を高めている。

コストや環境にとことん配慮した設計

20インチのホイールはアルミとスチールを組み合わせたもので、重量は6kg増えるものの、製造コストを抑えている。タイヤはグッドイヤーの試作品イーグル・ゴーで、10万kmの走行が可能だという。さらに、フェンダーは家庭用工具で取り外すことができるので、傷や凹みの修理も素早く行うことができる。

バッテリーには、コスト、重量、環境の観点から40kWhの小型ユニットが選ばれ、これを中心にクルマが設計された。最高速度は110km/hに制限され、加速性能は追求していない。シトロエンは、1kWhあたり10km(現在市販されているほとんどのEVの約2倍)のエネルギー効率と、1回の充電で400kmの航続距離を目標としている。

シトロエンOLIコンセプト
シトロエンOLIコンセプト    シトロエン

車内にワイドなインフォテインメント・スクリーンは備わっているが、従来の車載システムは搭載されていない。最近、ダチアなどの欧州ブランドで見られる「乗員の携帯端末を使う」方式を採用しているのだ。カセットプレーヤーのようなスロットでスマートフォンを接続し、その演算能力でシステムを駆動させるというもの。これにより、搭載するコンピューター(半導体)の数を減らし、コストと環境負荷の低減を図る。また、走行中にも使いやすいように、物理的な操作系による温度調節機能を搭載している。

シートのフレームはパイプ状の簡素なもので、背もたれの部分は3Dプリントされている。素材の使用量を減らすとともに、清掃や修理の簡易化を目的としている。シートの調節は制限されているが、座面に「サスペンション」のようなフォームボールを使用。座ると沈み込み、自然な体勢になるようにサポートしてくれる。

OLIには、変更されたばかりの新しいシトロエンのロゴが装着されている。新しいロゴは、1919年のロゴを現代風にアレンジしたものだ。シトロエンC3、C4、C5 Xなどでは、エンブレムから流れるようなクロームパーツが目立つが、OLIはいたってシンプルなデザインとなっている。将来的には市販車のフロントエンドもこのようなデザインになるかもしれない。充電時にはフロントのエンブレムが持ち上がり、充電ポートが姿を現す。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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