クアドリモーター
TEL:045-620-0181 FAX:045-620-0182
営業時間9:00〜18:00 定休日 日曜日、祝祭日(訪問する際は事前に連絡を)
http://www.quadrimoteur.jp/ [email protected] ※スタッフ:新型コロナウィルスワクチン接種完了
ヴィンテージから最新モデルまで
全てのインポートカーをサポートする「キカイの達人」。
戦前のヴィンテージカーからコンピュータ制御の最新モデルまであるゆる年代・メーカーの輸入車の修理を手掛けてきたクアドリモーター。その「スペシャルすぎるショップ」の秘密とは?
趣味的で特殊なクルマの整備や修理を生業とする、いわゆる『スペシャルショップ』には、その取り扱い車種を店主が熱意を注ぐメイクスやモデルに限るという“縛り”を設けているところが多い。それでこその“スペシャル”であり、技術や機材の深化がはかられるともいえる。しかし、「外車サポートガレージ」を掲げるクアドリモーターにおけるそれは『輸入車』であるということのみ。そして実際、同店にはクルマの車種や年代を問わず多くの輸入車ユーザーが愛車を託している。取材当日もファクトリーにはR107のメルセデスSLにハマーH2、そしてアルファ156などが、それぞれ全く異なった作業内容で入庫していた。そんな他店とは一風変わったスタイルを持つクアドリモーターとはいったいどのようなショップなのか、筆者は非常に興味をそそられた。
クアドリモーターが提供するサービスは、一般的な整備に始まり、エンジン、ミッションのオーバーホールといった重整備もおこなっている。しかも、その中にはATやエアコンといった、通常ならば外部の専門家に委託するような特殊な内容まで含まれているのだ。また、通常ではアッセンブリー交換となるような部品の部分的な修理や、電装系のハーネスや油圧系の配管制作までも内製している。そしてそういったメカニカルなアプローチからの修理をこなす一方で、各種コンピューター診断機をも使いこなすことにより、最新車種にも小回りの効いた対応をしているのだ。故に的確で確実な修理を適正な価格でユーザーに提供することができ、故に同店を主治医と任ずる輸入車ユーザーが絶えることがないのだろう。
しかも驚くべきは、クアドリモーターではこれらの非常に多岐にわたる業務を、粟木代表が一人でこなしているという事実だ。もともと少年時代より好奇心旺盛で自転車やバイクなどの「キカイいじり」が好きでたまらなかった氏は、国産車ディーラーのメカニックとしてそのキャリアをスタート、幾多の現場で経験と技術を研鑽していた。そしてある時に、とあるコレクターの許で数百台にも及ぶコレクションの整備から修理、レストアまでを任されることとなった。約十年間を過ごしたというその職場では、ブガッティやMG-K3といった戦前のヴィンテージカーやクルマ好きなら誰もが欲する名車の数々はもちろん、F1などの稀少なレーシングカーに、なんと戦前の航空機に至るまで、およそ考えつくほとんどといっていいほどの名車たちを手掛けたという。キカイ好きにとっては正に「夢のよう」であっただろう。
そのように表層だけの場当たり的な修理が許されない、文化財級の名車たちを相手にしてきた粟木氏は、不充分な要素の中から正しい解を導き出すために、常に自ら学び、調べ、部品を調達し、手に入らない部品は再生・製作してきた。そんな氏にとってクルマの年代やメーカーの違いによる差異などは大した事柄ではないのだ。今、目の前にあるキカイの構造と素材を理解し、その修理に最適な方法を導き出すだけ、ということなのだろう。しかもその道程に義務感はなく、「知りたい」という欲求を原動力としていることが感じられる。だから、いかなるクルマでも分け隔てなく修理できるのだろう。
最近面白かった仕事はなんですか、という筆者の問いに粟木氏はこう答えた。「ハマーH2の特注スチールホイールかな」。指さす先にはゴジラの爪のようなトレッドパターンを持つ巨大なオフロードタイヤが巻かれたホイールがあった。リム径こそ18インチと今どきでは大人しめだが、その幅なんと11Jという極太なホイールはMRWというアメリカ製でワンオフ品だ。クルマに装着したオーバーフェンダーに合わせるため、バックスペース(オフセット量)やリム幅などの詳細なデータに至るまでメーカーに細かく指示を出したという。こういったやりとりは間にエージェントなどを挟まずに粟木氏が直接おこなっているという。それはまた、海外からの部品や工具類の購入に関しても同じだという。ならばかなり外国語に精通しているのかと思い聞いてみると、「いやいや、英語なんて全く喋れないよ。こうやって長年やりとりしているウチに、文章ならばだいたいなにが書いてあるのかわかるけどね」という。ちなみに同店のウェブサーバの管理やPCのセットアップなども独学でマスターしたという。
いささかわかりづらい表現で恐縮だが、お話を聞いていて筆者が理解したのは、粟木氏は「キカイを修理する」という行為に対して優れた“デッサン力”を持った“スペシャルな”メカニックであるということだ。要はキカイを表面だけではなく、その構造、設計意図、歴史といったものをも立体的に捉えて修理できるセンスとでも言おうか……。あなたが、輸入車のユーザーで、信じられる主治医を欲しているならば、クアドリモーターの扉をノックされることをオススメする。