クルマ好きがバイクに「惚れる」理由 何物にも代えがたいライディングの魅力とは

公開 : 2024.02.10 18:05

・人はなぜバイクに乗るのか。 クルマがあるのにバイクに乗る理由って?
・エンジニアリングの魅力、機械と一体化する感覚は何物にも代えがたい。
・クルマ好きの自動車雑誌編集者が「バイクの魅力」を語る。

人がバイクに乗る理由とは?

人はなぜバイクに乗るのか。

日本と同様にバイク文化が息づく英国では、大小さまざまなブランドが魅力的なモデルを生産し、多くのライダーが己のマシンをこよなく愛している。かくいう筆者(英国人)も、自動車専門誌の編集者としてドライビングと雑務に明け暮れる傍ら、ライディングの魅力に取り憑かれた1人である。

クルマ好きだけどバイクも好き。それはなぜ?(編集長と筆者、それぞれの愛機)
クルマ好きだけどバイクも好き。それはなぜ?(編集長と筆者、それぞれの愛機)    AUTOCAR

人がバイクに乗る理由をネットで検索したとき、まさか一番上に出てくるのが、電動二輪車に乗ることを奨励する英国の行政のページだとは思わなかった。

ロンドンからほど近いノーサンプトンシャー州は、メルセデスF1チームなど世界有数の技術者が集まる地であり、F1やモトGPの舞台となるシルバーストーンのような有名なサーキットもある。

そんな背景もあって、ノーサンプトンシャー州議会はバイクを奨励しているのだろうが、なんという啓蒙的な場所なのだろう。

しかし、筆者が見つけられなかったのは、クルマ好きの人がバイクに乗る傾向があるかどうかを示す統計である。AUTOCARの英国編集部内ではスタッフ同士でバイクの話題もよく出るのだが、あるとき編集長代理が、なぜクルマ好きがバイクも好きになるなのか説明してほしいと頼んできたのだ。

時間の節約になる……けれど?

英国にはバイクの免許保持者が360万人、クルマの免許保持者は4000万人強いる。表向きは、ライダーとドライバーの割合は1対10弱ということになるが、実際の車両の数はこれに比例するものではない。

英国の道路には3217万台のクルマが走っているが、バイクは134万台しかない。多くのライダーは普段クルマを運転していると考えるのが妥当だろう。統計には頭を悩ませるが、筆者はライダーの知り合いが多い。

渋滞を避けて通勤時間を短縮しやすいというメリットも確かにあるが……。
渋滞を避けて通勤時間を短縮しやすいというメリットも確かにあるが……。

バイクの魅力とは何か? ノーザンプトンシャー州では、バイクに乗る理由の第一に「時間の節約」を挙げている。これはバイクの最大の神話だと思う。渋滞の中、同じ距離を走るのに、バイクはクルマより16~46%ほど時間を短縮できるというのは事実だ。

そして、英国人の平均的な通勤時間は片道30分弱。そのうちの3分の1、10分が渋滞だと仮定しよう。その中をバイクで走り抜ける。すると、バイクに乗ることで通勤時間が5分短縮されるという計算だ。ブラボー!

バイク乗りは「楽」じゃない

しかし、ライディングの前には準備しなければならないことがたくさんある。バイクを鍵のかかった倉庫にしまっている人もいるし、カバーをかけている人もいる。昼飯の弁当箱を助手席に放り込むわけにはいかないので、バッグにしまっておく必要がある。カップは持っていけないから、家を出る前にコーヒーを飲み干さなければならない。仕事用の靴は大抵、ライディングには使えないので、袋に入れて持ち運ぶ必要がある。

室内でライディング用の服に着替えると、オーバーヒートして汗をかき、ライディング中に風が当たって骨の髄まで冷えてしまうので、ヘルメットをかぶる直前に硬いプレート付きジャケットを着る。仕事着や弁当などの荷物もあるので、玄関から何度も往復しなければならない。

乗る前の準備、服装、荷物など制約は多い。雨や雪が降った日には……(白目)。
乗る前の準備、服装、荷物など制約は多い。雨や雪が降った日には……(白目)。    AUTOCAR

そして、家の鍵をしっかり閉めて、荷物をベルトやひもで固定し、最後にジャケットとヘルメットをかぶって……ああ、いけない、耳栓をするのを忘れた。

確かに、バイクはクルマよりも場所を取らないし、渋滞にも巻き込まれにくい。しかし、通勤時間をすべて街中で過ごすスクーター乗りは時間を節約できるが、郊外に住む人がバイクに乗っても、せいぜい周りのドライバーの通勤時間を短縮するだけだ。

それから、バイクの世話をする手間もある。洗車や注油はクルマより頻繁にしてやらないといけない。それに、クルマとバイクを両方所有するのであれば、その分費用がかさむ。1年のうち気温が「適切」な時期は数か月しかない。筆者は冬や雨の日にはあまり乗らない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事