フォルクスワーゲンID R EVニュル最速ラップ更新、背景は 次なる狙いも

公開 : 2019.07.06 11:50

パイクス・ピークでの活躍も記憶に新しいID Rですが、次なる目標に定めたのは、もうひとつの聖地とも言えるニュルブルクリンクでした。当然のようにEV最速の座を手にしたものの、昨年919 Evoが記録したタイムの凄まじさを、改めて認識させられることにもなりました。

もくじ

舞台はノルドシュライフェ
EVには試練 さらなるスピードが必要
驚異のタイム 偉大なマシン
番外編:ID R 次なる狙い

舞台はノルドシュライフェ

昨年、パイクス・ピークに広がる12.42マイル(19.99km)のヒルクライムコースで、圧倒的なコースレコードを記録したことで、フォルクスワーゲンID Rは、EV界の頂点に君臨することとなったが、それでも、ひとつの疑問が残されていた。つまり、次に挑むのはどこか? ということだ。

だが、フォルクスワーゲンにとって、その答えは明らかであり、すべての自動車メーカーにとって、自らのEVの実力を示す格好の舞台と言えば、曲がりくねった荒れた路面と、波打つアスファルトが12.90マイル(20.76km)も続く、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェを置いて他には存在しない。

表向き、今回の挑戦の目標は6分45秒90というEVラップレコードの更新というものだったが、本当のところ、その成功を疑うものなど誰もおらず、真の目的は、可能な限りこの記録を短縮することにあった。

これまでのEV最速ラップは、4基の電動モーターが1360psものパワーを発揮しながら、量産モデルとして公道走行も可能なNio EP9が記録したものであり、純粋なレーシングモデルとして、世界最大の自動車メーカーのひとつが生み出したID Rは、練習走行の時点ですでにNioのタイムを20秒も更新してみせたのだった。


2基の電気モーターが発揮するのは、「わずか」681psに過ぎず、フロントとリアアクスル上に1基ずつ置かれたこのモーターによって四輪全てを駆動するID Rは、決して史上最強のEVではないものの、フォルクスワーゲンでは、圧倒的なパワーよりも、実際の走行においてそのパワーをフルに活用できるかどうかが需要だと考えているのだ。

偶然にも、パイクス・ピークとノルドシュライフェのコース全長は、それぞれ12.42マイル(19.99km)と12.90マイル(20.76km)と非常に似通っており、フォルクスワーゲンでは、56ケのセルで構成された8つのモジュールを持つリチウムイオンバッテリーを、ふたつのブロックに分けて搭載するという、パイクス・ピークと同じ方式を今回も採用している(フォルクスワーゲンでは、依然としてバッテリー容量については何も明らかにしていない)。

だが、このふたつのコースで似ているのはその全長だけであり、ニュルブルクリンク挑戦に向け、ID Rには徹底的に手が入れられていた。パイクス・ピーク用に設置されていた巨大なリアウイングは小型なものへと変更され、新たなフロア形状とフロントスポイラーのデザインに代表されるドラッグ低減システムにより、最大20%の抵抗を削減することにも成功している。

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