メルセデス・ベンツS500L

公開 : 2013.07.03 20:00  更新 : 2017.05.13 12:51

■どんなクルマ?

シルバーにペイントされたメルでセス・ベンツSクラスは、アウトバーンを滑らかに、静かに、そして威風堂々と走っていく。ビロードのような柔らかいタッチで7速オートマティック・ギアが作動し、ツインターボで武装した4.7ℓV8の奏でるサウンドはかろうじて耳に聞こえる程度だ。例え、追い越しレーンでも、2000rpm以下の回転数で済ませられるほどのパワーの持ち主でもある。とにかく、注目に値するほど160km/hでのグルージングは「静か」のひとことだ。

もちろん、簡単にスピードを上げることも可能だ。やや遠くからタイヤノイズと風切り音が聞こえるだけで、奇跡的とも言える快適な乗り心地を保ったままスピードメーターの針は上昇していく。

5月に発表された第6世代のSクラスは、先進テクノロジーの要塞とも言えるもので、そのラグジュアリーさにおいては、アウディA8、BMW 7シリーズ、ジャガーXJ、レクサスLSよりも遥かに上のクラスである。

メルセデス・ベンツのボス、ディーター・ゼッツェによらば、この新しいSクラスには、今までのSクラスにはない任務が与えられているという。それは、3つのホイールベースと、6つのボディ・バリエーションが与えられたことに他ならない。特に、最も長いホイールベースのモデルにはプルマンのネーミングが復活し、ベントレー・ミュルザンヌやロールス・ロイス・ゴーストと対抗するモデルに仕上げられる予定だ。また、2ドアのクーペとカブリオレも設定される。

新しいSクラスの演出に関してメルセデスのとった方法は成功したといえるだろう。エクステリア・スタイリングは、旧モデルからかけ離れずにイメージを引き継ぎながらも、より素晴らしい造形を採り入れることによって発展させている。大型化され立派になったフロント・グリルやヘッドランプも、Sクラスにより高貴な印象を与えることに成功している。

今回試乗したロング・ホイールベースのLモデルは、旧モデルよりも21mm長く、29mmワイドで、11mm高い。それでいて、エアロダイナミクスはこのクラスでもトップ・レベルを保っている。具体的にはドラッグ係数は0.24で、ボディのアンダーパネルやホイールハウスに更なる空力的細工を施し、フロント・グリルにも可変シャッターを装備するS300ブルーテック・ハイブリッドに関しては0.23という値をマークしている。

もちろん新しいSクラスのボディは完全に新しく設計されたもので、そのボディ・スキンはアルミニウム製となっている。内部構造ではアルミニウムと高張力鋼板、そしてプラスティック・パーツが結合されている。重さはこのS500で5kg重くなった1940kgだが、そのわずな重量増加は剛性のドラマティックなほどの向上と、それに伴うバイブレーションの低下、スムーズな乗り心地をもたらしている。

エンジン・ラインナップにはそう大きな変化はない。254bhpを発揮する3.0ℓV6ディーゼルのS350ブルーテック、204bhpの2.1ℓ4気筒ガソリンに27bhpのモーターを組み合わせ合計228bhpを発揮するS300ブルーテック・ハイブリッドがラインナップされる。S350ブルーテックは19.9km/ℓ、S300ブルーテック・ハイブリッドは22.7km/ℓという燃費をもつ。なお、これら2つのモデルで、英国での販売の80%を占めると予想されている。

S400ハイブリッドも用意される。それは、302bhpの3.5ℓV6と27bhpの電気モーターを組み合わせたもので、15.9km/ℓという燃費だ。

われわれがドライブした、発売当初のラインナップの中ではトップ・モデルにあたるS500のV8エンジンは、旧型S500よりも20bhpほどパワーアップした449bhp/5250rpmのパワーを持つ。トルクは71.3kg-m/1800rpmだ。これに7速のGトロニック・ギアボックスが組み合わせられる。また、オプションとして4 MATICモデルも設定されている(残念ながら英国向けには用意されない)。

新しいSクラスのデザインは、新世代のメルセデス・ベンツのデザイナーの影響が大きい。特に、エレガントでシンプルなダッシュボードなどにそれは表れている。

物理的な快適装備としては、オプションのヒーテド・アームレスト、ホット・ストーン・マッサージ・モードを持つフロント・シート、悪ディブ・パフューミング・システム、バームスター製の24スピーカー3Dサラウンド・システムなどが用意されている。

■どんな感じ?

Sクラスは、以前にも増して偉大な設備と快適性をもたらしてくれる。シートは充分なクッションを持ち、それでいてサポートはしっかりしており、あらゆる方向の調整代を持っている。また、ハイグレードなマテリアルは、今回のSクラスのトピックにもなっている点で、ロールス・ロイス・ゴーストやベントレー・コンティネンタルの領域にまで達していると言える。

フロント・シートは前モデルよりも12mm広くなったヘッドルーム、14mm広くなったショルダールーム、10mm広くなったエルボールームを持ち、リア・シートは14mm拡大されたニースペースと9mm拡大されたショルダールームを持つ。リア・シートは5方向の調整を持ち、ファースト・クラス・リアとネーミングされたマイバッハ風のフォールディング・テーブルもセットアップされている。

また、充分すぎる安全機能も新しいSクラスの特徴だ。リア・ベルトに配置されたエアバッグ、オプションとなるナイトビジョンとレーダークルーズ・コントロールなどが代表的なもの。また、マルチメディア・システムの一部となるWANホットスポット・システムも装備される。

新しいSクラスに不釣合いな黒いプラスティックの電子キーでクルマをスタートさせる。そのサウンドは本当にかすかなものでしかない。

その大きな魅力は先進のサスペンションだ。パーフェクトともいえるレベルの仕上がりで、卓越したショックの吸収を見せてくれる。ノイズの抑制も素晴らしいものがある。S500は、メカニカル面での改良が最優先事項であったことを明白に示しつつ、滑らかに加速していくのだ。ドライブライン・フィットネスのターゲットは、アウディA8、BMW 7シリーズ、ジャガーXJではなく、シルバースパーやゴーストと同じレベルにあると考えられる。スポーティさをある程度抑えて、よりラグジュアリーな方向に振ったという明白なメッセージがそこにはある。

とはいうものの、S500には確実で堅実な加速をもたらすエンジン・パワーがある。0-100m/h加速は4.8秒と旧モデルよりも0.2秒速く、トップスピードの250km/hに達しても驚くほどの安定性を見せる。トランス・コンティネンタル・エクスプレスとしては第一級といっても問題はないだろう。

ハイウェイ・スピードでは寛いだ安定したクルーズが味わえる。高いギアレシオと、充分なトルクが、フロント・シートを倒してリア・シートに足を放り出して座っていれば、リラックスした、そしてフレキシブルな走行を約束してくれる。

ギアボックスも目に付く改良点だ。それはエンジンのレスポンスを効果的に伝えるためにマッピングが修正されている。本当にパフォーマンスとドライブラインの改善は”名人芸”と言えるものだった。

更に新しいSクラスの長所は、この上なくパッセンジャーに優しいことだ。街中のような低速から、アウトバーンのような高速まで、素晴らしい乗り心地とボディ・コントールを示してくれる。そのノイズ、バイブレーション、ハーシュネス共に、私がいままで経験した中では最も小さいものと断言できる。

ネガティブな点を敢えて探すとすれば、ステアリングだろうか。旧型よりも重い舵力を持つ電気機械式アシストを持つそれは、しばしば合成的な感じがして、センターを離れるとフィードバックにやや欠ける気がした。他の優れたテクノロジーからすれば、この部分は欠点といえるかもしれない。しかし、それが深いかといえばそうではない。ワインディング・ロードでも、狙ったラインをトレースすることはたやすいのだ。但し、コーナーを曲がる時にもう少しインフォメーションが欲しいと思うことはあるかもしれない。

また、ブート・キャパシティが減らせれてしまったのも問題かもしれない。特に、このクラスのモデルではあってはならないことだろう。

■「買い」か?

新しいSクラスは旧モデルよりも著しい向上を遂げたモデルである。初めてドライブした後には、その全体的な優秀さばかりが印象に残る。確かに若干の弱点はあるが、全体的に見れば、その仕上がりは秀逸だ。メルセデスは、大きなラグジュアリー・サルーンに求められるものが何であるかを理解しており、そして人々を失望させることのない出来にもっていっている。

技術的にはラグジュアリー・モデルのトップレベルにあることは間違いない。しかし、旧モデルと同様に、オプションとして提供されるのが多いのも事実だ。

ドライブしていてものすごく心やすまるモデルである。速く、経済性にも優れ、快適で、静かで、心地よく、豊かなインテリアを持っている。これまでのメルセデス・ベンツの中でも最高の1台である、といっても間違いない。

(グレック・ケーブル)

初試乗 / メルセデス・ベンツS300ブルーテック・ハイブリッド
初試乗 / メルセデス・ベンツS350ブルーテックL SEライン

メルセデス・ベンツS500L

価格 £86,840(1,322万円)
最高速度 250km/h
0-96km/h加速 4.8秒
燃費 11.6km/ℓ
CO2排出量 199g/km
乾燥重量 1940kg
エンジン V型8気筒4663ccツインターボ
最高出力 449bhp/5250rpm
最大トルク 71.3kg-m/1800rpm
ギアボックス 7速オートマティック
 
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