【姿も質も出色の純EV】フィアット500エレクトリックに試乗 航続距離320km 前編

公開 : 2020.12.16 10:25

今も堅調な人気を誇るイタリアン・コンパクト、フィアット500。次世代はひと回り大きく、少し豪華な純EVとして再発明されました。優れたデザインや上質さ、320kmという航続距離など、出色の仕上がりだと英国編集部は評価します。

エンジン版500もしばらく継続販売

text:Steve Cropley(スティーブ・クロップリー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
新しいフィアット500エレクトリックが登場した。同サイズの純EVはほかに複数台が存在するが、筆者の共感力という点では、ライバルより確実に高い。

競合モデルより、優れているからだけではない。500という、世界的なヒットを飛ばしたフィアット唯一のモデルに、純EVが加わったといううれしさもある。

フィアット500エレクトリック・ラ・プリマ(欧州仕様)
フィアット500エレクトリック・ラ・プリマ(欧州仕様)

現行型500の登場は2007年。全長3571mmという小さなボディをまとい、10年以上に渡って目覚ましい成功を収めている。60年以上前に登場した、小さなリアエンジンの「チンクエチェント」をモダナイズさせたスタイリングは、多くのユーザーを惹きつけてきた。

だからこそ、次のフィアット500が大きくなり、まったく新しいプラットフォームを採用し、バッテリーをエネルギー源とする純EVのみになるという発表には驚きがあった。これからフィアット500の販売はどうなるのか、という疑問が湧いて当然だった。

コンパクトさが売りの500。ユーザーは、ひと回り成長したボディを受け入れるのだろうか。フィアットとして最も支持の高かったガソリンエンジンを、一晩で捨て去るのだろうか。ほどなくして、詳細が明らかになった。

現行フィアット500の改良版は、しばらく継続して販売される。電圧12VのISGによるマイルド・ハイブリッドを搭載する、燃費の良い71psの3気筒エンジン版が投入される。多くのユーザーは、少し安心しただろう。

118psのモーターに、42kWhのバッテリー

フィアット500エレクトリックのプロトタイプには、すでに試乗している。全長は61mm伸び、ホイーベースも31mm長い。全幅は56mm広く、全高は40mm高い。軽く偽装されていたが、フィアット500らしい可愛いデザインを、新しいサイズでも実現していた。

今回はロンドンの西、40kmほどの場所にある英国フィアットの本社で、発表イベントとして生産版の試乗機会が与えられた。価格や仕様など、新しい500の追加情報も得ることができている。

フィアット500エレクトリック・ラ・プリマ(欧州仕様)
フィアット500エレクトリック・ラ・プリマ(欧州仕様)

フィアット500エレクトリック・ハッチバックには、英国ではアクション、パッション、アイコン、ラ・プリマという4種類のトリムグレードが用意される。コンバーチブルの場合、アクション・グレードが含まれない上位3種類だ。

最上級グレードとなるラ・プリマの英国価格は、ハッチバックで2万9995ポンド(404万円)から。コンバーチブルの場合は、3万2995ポンド(445万円)となる。

アクション・グレード以外の次期500に搭載される、1基の永久磁石モーターの最高出力は118ps。全グレードで前輪駆動だ。バッテリーは42kWhの容量があり、WLTP値で約320kmの航続距離を備える。

アクションのモーターは、最高出力が93psに落ちる。バッテリーは24kWhへ小さくなり、航続距離は約190km。車重が軽いぶん、0-100km/h加速時間は9.0秒と、118psのモーターを積む500と変わらない。

ラ・プリマの車重は1365kg。アクションより約100kgも重たい。ガソリンエンジン版の500と比較すると、350kgくらいは重くなっている。

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