【ニュルのタイヤ事情】ファルケン、開発現場の声 独ニュルブルクリンク24時間耐久レース  日本のコースとの違いは?

公開 : 2021.01.25 06:45  更新 : 2022.11.01 08:45

ニュル24時間の参戦マシンを支えるファルケン。レース・タイヤの開発陣は、グリーンヘルの印象を「実はタイヤが減らない」と語ります。世界一の草レースの秘話をご紹介。

モータースポーツ部に訊く ニュル活動

text:Hidenori Takakuwa (高桑秀典)

毎年、ドイツで開催されている「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」に挑むファルケン・タイヤ。東京オートサロン2021のバーチャル展示内で、レース活動の秘話が明らかになった。

ファルケンの特設チャンネル「パラレルTV」に登場したのは、住友ゴム工業 モータースポーツ部の中野敏幸氏。
 
2016年からニュル24時間に携わり、昨年からメインの担当者となった中野氏は、以前、市販タイヤを使った86/BRZレースを受け持っていた。

2020年のニュルブルクリンク24時間レースには、ファルケンタイヤ欧州部門のFALKEN Motorsportsが、911 GT3Rで参戦。44号車は総合10位、33号車は総合11位で完走した。
2020年のニュルブルクリンク24時間レースには、ファルケンタイヤ欧州部門のFALKEN Motorsportsが、911 GT3Rで参戦。44号車は総合10位、33号車は総合11位で完走した。    住友ゴム工業

当初、ニュルブルクリンクの道幅の狭さや高低差に驚き「よくこんなところでレースをしているな、エライところに来てしまったぞ」と思い、「本当に自分に務まるのか?」とも考えてしまったという。

嬉しさと不安が、半々という感覚だったそうだ。

現地でテストやセッティングを行うため、ニュルブルクリンクに年間7~8回ほど赴いている中野氏によると、レースタイヤ開発の魅力は、最先端の技術を自分の手で開発できることと、エンドユーザーとの距離が近いことなのだとか。

次の年をターゲットにするタイヤもあれば、2~3年後を見越して開発するアイテムもあるそうだ。
 
ここ数年で、ニュル24時間はポールポジションのタイムがアップしている。そのような状況の中でタイヤはよりシビアな方向で使われるので、速さを追求しつつ、長く使えるようにすることも同時に考えているという。

ニュルの路面 どんな感じ?

グランプリも開催されるパーマネントサーキットと、峠道のようなコースが組み合わされているニュルブルクリンクは、路面が多様だが、表面が総じてスムーズなので、意外なことに日本のサーキットとは異なり、タイヤが減らないのだという。

北コースだけでなく、グランプリコースのほうも減らないそうだ。

東京オートサロン2021のバーチャルブースで視聴できる「パラレルTV」。住友ゴム工業 モータースポーツ部の中野敏幸氏が、ニュル活動の秘話を語ってくれた。
東京オートサロン2021のバーチャルブースで視聴できる「パラレルTV」。住友ゴム工業 モータースポーツ部の中野敏幸氏が、ニュル活動の秘話を語ってくれた。    住友ゴム工業

そして、ニュル24時間は、タイヤウォーマーを使えるため、ドライバーが冷えたタイヤを自分で温める必要がなく、最初からタイヤの表面を理想的な状態で使えるので、ピットを出た瞬間から全開で攻められるという。

なにしろ、ドライバーがレースカーを走らせながら冷えたタイヤを温めた場合、どうしても表面が傷んでしまう。これでは最大限のグリップを使うことができないそうだ。

乾いた路面を走るためのドライ用タイヤが、ソフト、ミディアム、ハードの3種類。それに加えて、雨用のタイヤと乾きかけの路面に使うタイヤがあるので、計5種類のタイヤをニュル24時間に持ち込んでいる。それぞれ、20から25セットほど準備する。

ちなみに、レースカーの性能やサーキットのコンディションにピンポイントで合わせているスーパーGT用などとは異なり、ニュル24時間に持ち込んでいるタイヤは、もう少し多様なコンディションで使えるように総合力を高めた仕様になっているという。

また、日々苦労の連続で、タイヤの耐久性をギリギリまで向上させ、その上で求められるグリップ性能もどんどんアップさせていくことが難しい点であるとも話してくれた。

ニュル24時間は、ドライバーだけでなく、レースカーもポディウムに飾ってもらえるので、今後の目標として表彰台獲得にこだわっていきたいという。

その先の目標としては、もう少しタイヤを供給するマシンの台数を増やしていきたいそうだ。

記事に関わった人々

  • 高桑秀典

    Hidenori Takakuwa

    1971年生まれ。デジタルカメラの性能が著しく向上したことにより、自ら写真まで撮影するようになったが、本業はフリーランスのライター兼エディター。ミニチュアカーと旧車に深い愛情を注いでおり、1974年式アルファ・ロメオGT1600ジュニアを1998年から愛用中(ボディカラーは水色)。2児の父。往年の日産車も大好きなので、長男の名は「国光」

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