EV航続距離、AIが伸ばす? サイドウォールの「わずかな凹凸」も影響 住友ゴムがタイヤ開発に活用

公開 : 2024.04.03 18:05

住友ゴム工業がAIも活用した「タイヤ空力シミュレーション」を開発。タイヤの空気抵抗を解析し、最適なデザインを提案することでEVの航続距離を伸ばす狙い。サイドウォールのわずかな凹凸も大きな抵抗になるという。

サイドウォールのレダリングも大きく影響

人工知能(AI)は憂慮すべきこと(フェイク動画の作成など)にも使われているが、社会に役立つ利用方法も多く生まれている。

住友ゴム工業は、空気抵抗を減らして電気自動車(EV)の航続距離を向上させる「タイヤ空力シミュレーション」という技術にAIを活用している。

住友ゴムはAIも活用し、空気抵抗を抑えたEV用タイヤの開発を目指している。
住友ゴムはAIも活用し、空気抵抗を抑えたEV用タイヤの開発を目指している。    住友ゴム工業

この技術は、タイヤ付近のわずかな空気抵抗まで軽減しようとするもので、2027年に発売予定の次世代EVタイヤの開発に活かされるという。

ホイールとタイヤが転がるとき、周囲に及ぼす空気力学的な影響がクルマのエネルギーロスに大きく寄与することは以前から知られていた。そこで、自動車メーカーは設計の細部にまで注意を払い、タイヤ前方の気流を整えるエアカーテンのようなアイテムを導入して空気抵抗を減らそうとしているのだ。

EV開発において、空気抵抗は特に重視されるようになってきている。エンジン車が燃やした燃料のエネルギーの50%以上を熱として失うのに対し、EVのドライブトレインはエネルギーロスがほとんどない。そのため、EVの総エネルギーロスにおいて空気抵抗が大きな割合を占めるようになったのだ。

住友ゴムによると、エンジン車の空気抵抗によるエネルギーロスの20〜25%にタイヤが関係しているという。EVの場合、転がり抵抗を加えると、その割合は34〜37%に上昇する。

タイヤ空力シミュレーション技術は、実車両のデータを解析し、タイヤ周辺の空気抵抗を計算し視覚化する。

気流を視覚的に表現してみると、サイドウォールの微細な凹凸でも気流が分断されて大きな渦が発生し、空気抵抗が増大していることがわかる。同時にAIの解析で、車両重量重によるタイヤのたわみの影響も考慮される。

また、サイドウォールのレタリングやマーキングデザインなど、抵抗を最小限に抑えるためのシミュレーションを行った。このシミュレーション結果を風洞実験で検証したところ、タイヤ後方の気流やサイドウォールの凹凸を減らすことで、標準的なタイヤよりも空気抵抗を抑えられることが示された。

AIも、タイヤ周辺の空気抵抗が大きくなるほど、サイドウォールのデザインが及ぼす影響が大きくなると示唆したという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    英国編集部テクニカル・ディレクター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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