【トライデントの完全復活】マセラティMC20へ試乗 自社開発の3.0L V6 630ps 前編

公開 : 2021.05.22 08:25  更新 : 2022.08.31 18:38

スーパーカー・クラスへの復帰を果たしたマセラティ。自社開発のV6ビトゥルボにカーボン製シャシーを備え、高性能と扱いやすさを両立させたようです。

構想から2年で仕上げたミドシップ

text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
マセラティは、失敗の許されないプロジェクトだと深く理解していたようだ。経営に余裕はない。スペック表には、高性能ライバルに引けを取らない数字が並ぶ。ブランドを未来へ導くように。

伝統と格式あるイタリアの自動車メーカー、マセラティ。独自開発としては初となるミドシップモデルが、ついに姿を現した。MC20は新しい時代の幕開けだと、自ら力強く表現している。

マセラティMC20(欧州仕様)
マセラティMC20(欧州仕様)

これまでのマセラティとは、一味違うモデルでもある。最先端のデジタル技術を駆使して設計され、構想からたった2年で、2シーターのスーパーカーを量産にこぎ着けている。

モータースポーツでの経験をもとに、コンピューターによるシミュレーションと一般的な路上試験を組み合わせ、ラピッド・プロトタイプの仕上がりを詰めた。「プロジェクトを始めるに当たり、これまでとは異なる手法を取ろうと決めたのです」

MC20の開発責任者、フェデリコ・ランディーニが説明する。「開発の大部分は、モータースポーツ分野での新パートナーと協働し、デジタル環境で進められました。ボディやシャシーだけでなく、エンジン開発も含まれます」

「新しいプロセスは、目標の期限通りにクルマを発売するための、カギとなるものでした。それ以外の手法では困難だったでしょう」。マセラティにとって、本当に新しいチャレンジだったのだ。

一方でMC20というモデル名は、マセラティが21世紀初頭に決めた従来のルールに則っている。MCは、マセラティ・コルサ(レーシング)の略。数字はモデル名が発表された年、2020年を表す。

マセラティの優れた地位を確立する

英国価格は18万7230ポンド(2808万円)から。ライバルとして見据えているのは、ミドシップのスーパーカーたち。フェラーリF8トリブートランボルギーニウラカン、新しいマクラーレンアルトゥーラなど、ツワモノばかりだ。

MC20は、イタリア・モデナでの生産が始まったばかり。英国へは、2021年の半ば以降へ到着する予定だという。マセラティが見込む年間生産台数は、今回試乗したロードゴーイング仕様と、追って登場するレーシング仕様を合わせて1500台となっている。

マセラティMC20(欧州仕様)
マセラティMC20(欧州仕様)

新モデル開発の狙いは、スーパーカーやモータースポーツ分野での、マセラティの優れた地位を確立すること。ギブリレヴァンテクアトロポルテといった台数を見込めるモデルで、スポーティさや技術的な先進性といったイメージを、一層高めたいと考えている。

これは、マセラティが以前から試みてきた手法。1971年には、初のミドシップ・スーパーカーとしてボーラが発売されている。こちらは単独ではなく、シトロエンの力を借りていた。

MC20の基礎をなすのは、カーボンファイバー・モノコック。内燃エンジンだけでなく、純EVにも対応できるように設計されている。モノコックの前後には、アルミニウム製のサブフレームが組まれる。

このモノコックは、マセラティが量産してきたクルマの中で最も剛性に優れるという。2004年に少量生産された、高度なエンツォ・フェラーリがベースのMC12をも上回っている。それでいて、MC20の車重は1475kgと比較的軽量だ。

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