スコダ・ラピッド・スポーツ1.2TSI 105

公開 : 2014.05.30 23:30  更新 : 2017.05.29 18:40

■どんなクルマ?

もともとお買い得なスコダ・ラピッドの、更にもう少しお買い得で、しかもスポーティな装備を施したモデルである。ラビット・スポーツに真新しい性能進化はないが、ライバルであるフォード・フォーカスがいつも発表するようなスペシャル・エディション、つまりは現行モデルにバーゲン・プライスとも言える装備を満載したモデルなのである。

そのベースは、中間グレードの1.2ℓ105ps、TSI SEモデルだが、スポーティな17インチ・アルミホイール、スポーツ・シート、銀色のペダル、ブラックアウトしたサイド・ミラーに、スポーツ・エディションと同等のトランク・スポイラーを装備するなど、SEグレードを越える装備がされている

これらの装備は合わせて£1250(21万円)分だが、それでいてSEグレードと同価格の£15,630(265万円)という値付けがされている。それらを除いては通常のラピッドそのものだ。

あくまで至って普通のクルマではある。長くてわずかに車幅が細く、平均的なファミリー・ハッチより少し安っぽい。ラピッドは完璧にチェコの普通のファミリー・ハッチなのである。乗り手に対して十分なスペースが保たれ、機能的でがっしりしていて質素でと、必要にして十分といったところだろうか。

■どんな感じ?

普段使いを基本と考えるクルマを必要としているなら、ラピッドは的を得ているクルマと言えよう。そして何よりも安価だ。同クラスのヴォクゾール・アストラより少なくとも£3000(50万円も安いのである。これは注目に値することだ。このクルマは個人オーナーに対してはバーゲン・プライスともいえるもので、しかもエンジンのチョイスに関しても過不足ない。

ラピッドに搭載されるターボ付き1.2ℓガソリン・エンジンは意外にも静かでスムーズながらもトルクの豊かさも持ち合わせており、燃費も良く、拭け上がりも軽い。エンジンに関してはこういった類のクルマとしてはそれなりといったもので、さしたる問題は見受けられない。

アイドリング時、巡航時はエンジンノ・イズとは無縁。しかし踏めば小気味良い感じのするパワー・ユニットだ。ベタ踏みすれば鋭くきとんと堅実に1500rpm以下から5000rpmを越えて行く。

このエンジンはラピッドが6速MTと組み合わせる唯一のものであり、経済的なディーゼルとは相対的に実に元気な印象だ。燃費は18.4km/ℓという至って平凡なものであり、実際にもラピッド・スポーツは燃費走行を心がけずとも15km/ℓ台という数字を実現する。そもそも高速道路でもそのパフォーマンスをひけらかすようなモデルでもないため、深刻な批判を受けるようなこともない。

1.2ℓガソリン・エンジンは1.6ℓディーゼル・エンジン搭載の “グリーンライン” よりも165kgも軽く、路上ではよりダイナミックな車両特性を見せる。ラピッド・スポーツは基本的にはソフトで静かな乗り心地であるが、低いレートのシャシー設計は多くのアドバンテージと妥協と共にある。素直で従順なセッティングだが、路面の轍には多く反応をしてしまうようだ。それはダンパーについても同様だ。

ラピッドのボディは足元がソフトなセッティングのため、上下の挙動も大きい。とはいえ、自由自在のコントロールとはいかないがグリップを失うようなこともなく、快適性が損なわれることもあまりない。しかも鈍重なわけでもない。ステアリングは軽く、予想通り完全に単調で接地感もあまりないものではあるが、それも大きな問題ではない。クルマ自体は扱いやすく、コーナーではきちんとしていて十分だ。それはフォルクスワーゲン・ゴルフ、フォード・フォーカスあるいはプジョー308のシャシー特性よりはもっと初歩的な味付けで、ダチア・ローガンに似通ったものがある。

また、ラピッドは値段でも期待に応えるものを持っている。と同時に、4名の乗客に十分なスペースと満足できる心地いいキャビンを持ったクルマなのだ。スポーツ・シートと銀色のペダルはレザーが表面にあしらわれたシフトと上手く調和し、色彩豊かに見せる。標準装備のエアコン、クルーズ・コントロール、ブルートゥースとの連携がとれたインフォテーメント・システムも印象的だ。外見的にはバック・ミラー・ハウジングと17インチ・アルミホイールが存在感を醸し出す。ただし、ボディに関して言えば、トランク・スポイラーが白くキラキラした服を着ている年金受給者のように少し場違いに見える。酷だがスポイラーを含んだセンスは少々いただけないものがある。また、ブラックアウトされたミラー・ハウジングからも実に成金的なものが感じられた。

■「買い」か?

買うべき価値のある1台だ。もしそうすれば多くの資金をセーブすることにもつながるはずだ。ラピッド・スポーツはコスト・パフォーマンスにも優れ、すでに多くの個人オーナーを獲得している。それは最も現実的で、スポーティで、オプション・パーツが適切に追加されたことでより洗練されたうえに、運転するには必要にして十分と言える。素晴らしくはないが、低評価とは程遠い。

もっと大切な点は自身の普段のカーライフに対して事足りるか否かだ。また、明らかなスポーティさが魅力的にうつるかどうかというところであろう。また、キア・シードを見て、それほどまでの過剰な装備が必要と思うかどうかということだ。もしそう思うのであればあなたは少数派である。ではあるが、そう思うのであればこれは賢明な1台と言える。

(マット・ソーンダース)

スコダ・ラピッド・スポーツ1.2TSI 105

価格 £15,630(265万円)
最高速度 195km/h
0-100km/h加速 10.4秒
燃費 18.5km/ℓ
CO2排出量 125g/km
乾燥重量 1100kg
エンジン 直列4気筒1197ccターボ
最高出力 105ps/5000pm
最大トルク 17.8kg-m/1550-4100rpm
ギアボックス 6速マニュアル

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