銃弾に耐えるだけでは不十分 「防弾車」に絶対欠かせない性能とは? VIP御用達のCAV

公開 : 2024.11.07 06:05

乗用車ベースの防弾車は英語圏で「CAV」と呼ばれる。銃撃や爆弾攻撃に耐える防護性能だけでなく、危険から素早く逃れるための走行性能も極めて重要だ。どのように作られるのか、簡単に紹介する。

「素早く安全に逃げる」 防弾車の2つの規格

乗用車ベースの防弾車は、ほぼ同じ外見でありながら、軍用レベルの攻撃をかわすことができる。英語圏では民間装甲車(CAV)と呼ばれているが、CAVの最大の特徴は、大幅な重量増にもかかわらず、悪党を出し抜くのに必要な走行性能とハンドリングを実現している点である。

CAVは、自動車メーカーまたはサードパーティの企業が生産しており、高い保護能力を必要とする政府要人や民間人によって使用されている。

防弾車には防護性能と走行性能の両立が求められる。(写真はBMW i7 CAV)
防弾車には防護性能と走行性能の両立が求められる。(写真はBMW i7 CAV)

英国では、CAVについて2つの規格が存在する。「PAS 300」は車両の防弾および防爆性能に関するもので、「PAS 301」は最大1トンの装甲を追加することを念頭に置いて車両そのものの性能を評価するものだ。

CAVは一般的に、高速で回避行動をとる際の重量増の影響に対処するため、高度に改良されている。ガス攻撃に備えた空気ろ過システム、二重充電が可能なバックアップ・バッテリーシステム、重度の損傷を受けても機能を保持する多層ラミネート装甲ガラスを備えたものもある。

チェコの自動車メーカー、スコダの新型CAV「コディアック・アーマード(Kodiaq Armoured SUV)」は、積載量、最高速度、ハンドリング、ブレーキに関する試験など、PASテストの両方に合格した。

側面、ルーフ、床下の爆風保護性能の試験を受け、ハンドガン、ライフル、アサルトライフルなどさまざまな武器から発射された200発の弾薬に耐えた。

損傷を受けても高速で逃げられるよう、サスペンションとブレーキも強化され、ランフラットタイヤにはタイヤ保持システムが装備されている。

PAS 301認証の取得には、車線変更操作、スラローム、一般的なハンドリングテストといった業界標準の試験を受けなければならない。いわゆるJターンも重要で、ドライバーは進路を塞ぐあらゆる障害物から高速で後退し、スムーズな操作で一気に180度回転して反対方向に車体を向ける必要がある。

コディアック・アーマードには、サイレンシステムと非常用照明、さらに8インチのタッチスクリーンを中心とした通信ハブも搭載されている。

CAVのベースには一般的に高級車が選ばれることが多い。コディアックはスコダのフラッグシップモデルであるが、コディアック・アーマードも標準車と同等の快適性を保ち、2000Lのトランクと四輪駆動を含むさまざまなパワートレイン・オプションを備えている。

英国政府はアウディA8 CAVを使用している。これは個人でも購入できるが、アウディはセキュリティ上の理由から技術的な詳細を非公開にしている。JLR(ジャガーランドローバー)はレンジローバーCAVを何年も生産してきたが、新型では行っていない。

高額にもかかわらず、CAVは比較的人気がある。例えば、スコダは2018年の発売以来、13万ポンド(約2500万円)のスパーブ・アーマードを500台近く販売している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    英国編集部テクニカル・ディレクター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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