作らずにはいられない! 英国随一の模型メーカー、AIRFIX本社に潜入 カーモデル開発現場訪問

公開 : 2022.02.06 06:05

クルマ好きの中には、模型好きも多いはず。今回はAIRFIX本社を訪問し、開発の裏側を見てきました。

幅広いラインナップを揃えるAIRFIX

すべての人に平和とAIRFIXのキットを。クリスマスのような大切な日に模型を作れば、女王の演説を聞かなくて済む。何しろ、接着剤で汚さないようフロントガラスを取り付けるのに忙しいのだから。

男は少年、女は少女だった頃から、模型を作っている。通常は数十年のブランクを空けることになるが、ほとんどの場合、魅力的な箱絵や、その中に収められた繊細なデカール、パーツが付いたひょろ長いランナーに惹かれて、また戻ってくるのだ。

AIRFIXは1939年に英国で創業した玩具・模型メーカーだ。
AIRFIXは1939年に英国で創業した玩具・模型メーカーだ。    AUTOCAR

すべての人間がクリスマスの夜に七面鳥を捌いているわけではない。接着剤とペンチを手に、ランナーからせっせと車輪を切り取っている人もいるはずだ。もし、その人がAUTOCARの読者なら、その車輪は飛行機ではなく自動車のものである可能性が高い。

運が良ければ、その自動車はAIRFIXの「ヴィンテージ・クラシック」シリーズの主役で、110ポンド(約1万7000円)のベストセラーモデルである「1930 ベントレー4.5リッター・スーパーチャージド」かもしれない。1/12スケールのこのモデルはとても美しく、大きなもので、スキルレベルが「4」であるため、大晦日を過ぎるまで製作に取り組むことになるだろう。

AIRFIXのヴィンテージ・コレクションには、オリジナルキットがコレクターズアイテムとなり、最近再登場した「1966 ジャガー420」や「ビーチバギー」などもある。いずれもオリジナルの箱絵が施され、当時の雰囲気を再現している。経験豊富な帰国子女、つまり接着剤でベトベトになることなく組み立てる技術を持つ、“リターンモデラー”を対象としている。

そこまでの技術がない人向けには、塗料、接着剤、ブラシがセットになった「スターターキット」が用意されている。車種は、アストン マーティンDBR9、ジャガーEタイプミニ・カントリーマンWRC、1967年型フォード3.0リッターGTなど。

最後に、本当に不器用な人や若い人のために、接着剤不要の「クイックビルド」シリーズがある。ABS樹脂でできたパーツをはめるだけで組み立てられ、フォード・マスタングアウディR8、ジャガーIペイスeトロフィー、マクラーレンP1など、多彩なラインナップが揃っている。

本社ショールームを見学 古い金型も並ぶ

ところで、AIRFIX(エアフィックス)という名前は聞いたことがあっても、その本社がどこにあるか知っている人はいるだろうか?

実は、英国南東部のケント州マーゲイトにあるのだ。現在、SCALEXTRIC(スケーレックストリック)やPOCHER(ポケール)といったブランドとともに、HORNBY HOBBIES(ホーンビィ)社の傘下に入っている。

AIRFIXの英国本社
AIRFIXの英国本社    AUTOCAR

マーゲイトの本社には、老若男女を問わずAIRFIXとPOCHERの完成品を鑑賞できるビジターセンターがある。筆者は昨年末、幸運にもAIRFIXのショールームを見学させてもらい、数々の完成品やカタログを見て回ることができた。

もちろん、航空機が圧倒的に多いのだが(スーパーマリン・スピットファイアは、同社で非常に人気のあるモデル)、アブロ・バルカン、ソッピース・キャメル、メッサーシュミットBf 109などと一緒に、自動車も展示されている。まずはクイックビルド、その先の棚にはスターターキット、そしてベントレー・ブロワーと、美しく組み立てられたカーモデルが整然と並ぶ。

今年はさらに多くのカーモデルの発売が予定されているが、ガイドをしてくれたAIRFIXブランド責任者のデイル・ラックハーストに、「現段階でその内容を明かしてしまうと、あなた(筆者)を解体してパーツをランナーに取り付けなければならないでしょうね」と言われてしまった。

ショールームの見学が終わり、古い工場フロアに移動する(キットはインドで、デカールはイタリアで製造されている)と、その光景に思わず目を奪われた。そこには1960年代に作られた古いモデルの金型がずらっと並び、その重さで棚を唸らせていたのだ。

このスチール製の金型にポリスチレンが注入されることで、1つ1つのパーツが形成されていく。金型を覗き込むと、表面は高度に研磨され、ランナーに表示されている部品番号が見えた。モデルにもよるが、新しい金型一式(ボディシェル用、シャーシ用、ウィンドウ用)は約5万ポンド(約780万円)で、700kgのスチールを必要とするという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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