フォード・フィエスタST3 vs フォルクスワーゲン・ゴルフR

公開 : 2014.07.07 23:50  更新 : 2017.05.29 19:33

この記事のタイトルをご覧になって、どうしてフォード・フィエスタ STとフォルクスワーゲン・ゴルフ Rを比較するのかと疑問に思った向きもあるかもしれない。

仮に、である。あなたが約300psを発揮する、四輪駆動のゴルフRを購入するのに十分なお金、つまり£31,000(459万円)をお持ちだとしよう。そこでもし、フォード・フィエスタSTがゴルフRの3分の2の価格だったとしてもゴルフRを買うだろうか。

あるいはあなたがフィエスタSTを買うことを心に決めていたとして、その価格に上乗せされる£11,000(163万円)分の金額の価値をゴルフRに見出だせるだろうか。我々があなたを説得したとしても。

後者の場合、おそらくは見いだせないだろう。ただし前者の場合、これはかなり難しい決断になってくるのではないだろうか。

というのも、フィエスタSTがあまりにも才能溢れる仕立てになっているからだ。折にふれて、’手の届く価格で買える楽しい車’のトップを探すためのテストを行っているのはご存知のとおりだ。12ヶ月前に行ったテストでも、ゴルフRの価格に近いケータハム・スーパースポーツやBBRチューンのマツダ・MX5と接戦だったことは記憶に新しい。

そして今回の’ST3’なるモデル・ネームをもつこの車は、フォードの公式チューナーであるマウンチューン社によって手が加えられ、さらにパワーを増強させているのである。

そうはいうもののゴルフRは300psまで鍛えなおされているのだから、215psのフィエスタSTと比較するのは既に勝敗がはっきりとしているののではないだろうか。それに0−100km/h加速に要する時間は前者が4.9秒で後者が6.6秒、これまた大きな差があるのだ。しかしながら、高貴な香りを漂わせ、高度な技術をふんだんに注ぎ込んだドイツ製マシンと、不撓不屈の精神を持ち合わせたブルー・カラーが作り上げたマシンをいざガチンコ対決させてみれば、そこには思いも寄らない結論が導かれたのだった。

しかしやはりゴルフはゴルフ。2台を繰り返し乗り越えながら走らせたならば、広々とした快適でうまく組み付けられた内装と、DSGデュアル・クラッチATを持つゴルフRに£31,315(464万円)を支払ったことにあなたは心から満足できるはずだ。

明確に、疑いの余地なく、ゴルフRの方がフィエスタSTのそれよりも我々にたくさんのものごとを与えてくれるのだ。いつだって、どこだってとても速く駆け抜け、モーターウェイではフィエスタSTのそれに比べてゴルフがいかに寛大な車であるかがわかるのだ。さらにローカルな道にシーンを移せば、特に苦労することもなくフィエスタSTを置いてけぼりにすることもできるのである。九十九折の道が続けばフィエスタSTだってゴルフRのペースについていくこともできるのだが、それもそんなに長くは続かない。

ゴルフ優勢の種となるのは、場所を選ばないグリップとスタビリティの高さだ。これに関してはおそらく、ゴルフRより右に出るものは現段階では存在しないだろう。ギアボックスは瞬時にキック・ダウンを行い、いつだって多量のトルクを供給してくれる。またゴルフRの持つ四輪駆動システムは一瞬たりとも狂うこと無く路面を適切に掴み続けるのだ。

ある程度の速度まで引っ張ったり、ある地点から他の地点へと移動する際に苦労を強いる局面が一切ないのは、従順に仕立てられたシャシーのおかげだろう。たとえ路面状態が悪化したとしても、シートの上にあるあなたの身体を揺さぶることが無いのも同様の理由だ。ステアリングは鋭敏であることに変わりはないのだけれど、だからといって尖りすぎてはいないため、活発すぎるだとか不品行であるといった印象を受けることはない。普通ならばバンプステアや、四輪駆動特有のトルクステアが垣間見られたとしても致し方ない部分もあるのだが、ゴルフRの場合それらの疵瑕は見事に抑えこまれていた。

トラックに舞台を移してもフォルクスワーゲンのもつマナーは変わらず、目に見えぬ洗練性をこれでもか見せつけてくれる結果となった。ドライバーに対して無礼な挑発をすることもなければ、無意味なパワー・スライドを続けるような無駄なパワー顕示は一切ないし、一昔前のランエボのように、無骨に体当りしていくようなキャラクターもない。

その代わりにペダルと車輪を用いて、ゴルフRのもつ毅然としたスタビリティをうまく利用しながら、どのような速度でコーナーに鼻を向け、適切なポジションを確保し、またスムーズに速く、つまり正しく運転するには何をどうすべきかを常に考えさせてくれるのだ。

ゴルフRが滑らかに、そして確実にコーナーから脱出する一方、フィエスタSTは抱腹絶倒と言わんばかりの実に気ままな走りをするのだ。カントリー・ロード然り、ゴルフがあなたに求めるよりも多くのことを要求してくるのである。

バンクでは力強くボディを引っ張り、コーナーではあなたの期待以上に向きを変えて邁進していくため、ドライバーを時折驚かすこともあるかもしれない。グリップ・バランスはゴルフよりも格段に鮮やかで陽気、リア・アクスルが荷重を失った途端に、いとも簡単にスライドし始めるのだけれど、それを直感的に封じ込めることもできる。

またトラックを走らせれば動力性能の高さのすべてをすぐに理解できるはずだ。ダイレクトなのだけど、ナーバスだったり落ち着きに欠けるわけではない。お望みならばゴルフのように運転できるほどグリップ・レベルは高く、安定感も素晴らしい。その上ESPが不必要にでしゃばることはなく、ドライバーを元気づけてくれるのだ。また前のめりな印象もなく、とくにレブ・バンドの最後の1500rpmあたりでの柔軟性はさすがはマウンチューン、特筆ものである。

3ラップ程度の走行で、あなたはゴルフにはない魅力をフィエスタから感じることになるはずだ。もっともそれらの魅力のすべてがラップ・タイム向上に繋がるものではないのだけれど、あなた自身の顔を満面の笑みにすることは間違いない。これらすべての演出は、ホイール・サイズが大きくなり、コントロール性を蔑ろにしてまでパワーを優先するようになる以前のホット・ハッチの姿を具現化しているとも言える。ミドル・コーナーでは要求に応じてオーバー・ステアが顔をのぞかせ、低速コーナーでは完璧に挙動を予測しながら修正することができるのだ。

群を抜くステアリングの正確性と、グリップからスリップへのマージンの寛大さを感じることができるからこそなせる技であり、そのお陰で自身を持ってコーナーに侵入することができるのだ。

ゴルフRは雨が降ろうが槍が降ろうが、いつだってとてつもなく簡単に速く走らせられる。もちろんフィエスタSTだって速い車であることは間違いない。ただそれ以上にあなたを手放しに楽しませてくれる魅力を持っているのである。

べつの言い方をすればゴルフは信じられないくらいに懐が深く、効率性に対して実直なのに対して、フィエスタは僅かなスタビリティと使い勝手と引き換えに、羽目を外し、熱狂することを許してくれるのである。そして最後の最後で我々はその’楽しさ’の方を選ぶのである。

(マット・ソーンダース)

フォルクスワーゲン・ゴルフR

価格 £29,990(520万円)
最高速度 250km/h
0-100km/h加速 4.9秒
燃費 14.5km/ℓ
CO2排出量 159g/km
乾燥重量 1495kg
エンジン 直列4気筒1984ccターボ
最高出力 300ps/5500rpm
最大トルク 38.7kg-m/1800rpm
ギアボックス 6速デュアル・クラッチ

フォード・フィエスタST3

価格 NA
最高速度 224km/h
0-100km/h加速 6.9秒
燃費 17.0km/ℓ
CO2排出量 138g/km
乾燥重量 1163kg
エンジン 直列4気筒1596ccターボ
最高出力 182ps/5700rpm
最大トルク 29.6kg-m/1900-4000rpm
ギアボックス 6速マニュアル

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