■どんなクルマ?

フォルクスワーゲンの公式発表によると、まずは天然ガスを燃料とするゴルフTGI、その次にこのページで紹介するe-ゴルフ、そしてその後にガソリンとバッテリーのハイブリッド車であるゴルフGTEが今年の夏の終わりにデビューするそうだ。

バッテリーを動力源とするゴルフの導入は他のメーカーの動向を見るかぎり、必須事項だと言っていいだろう。そしてデビューさせる以上、他の兄弟車との明確な差別化をする必要がある。こここそフォルクスワーゲンの踏ん張りどころなのである。

既に導入が始まっている新設計のMQBプラットフォームは、ガソリン、ディーゼル、天然ガス、ハイブリッド、電気モーターなど、どの動力源にも対応できるため、構造面ではバッテリーを積載したとしても理論上何ら問題はない。フォルクスワーゲンによると、製造も同じラインで行えるそうだ。

■どんな感じ?

購入しようか迷っている人々が、まず第一に求めるのは、他のメーカーのクルマと同じようにe-ゴルフもまた洗練されているかどうかだと思う。

ドライビング・ポジションや、シートの調整幅、インテリアの使い勝手などが、標準のゴルフより劣っていないか。あるいはDSGのレバーが大幅に仕様変更されていないか、など気になる点が多いはずだ。

実際の所、先述したように柔軟性の高いMQBプラットフォームのおかげで、バッテリーによってスペースが狭まったなどということは殆どない。24kWhのリチウム-イオン・バッテリーはセンター・トンネルの両脇のフロント・シートとリア・シートの下部にすっぽりと収まっている。したがってトランクのフロア下のスペースは制限されているが、このせいで困り果てると言うようなユーザーは殆どいないだろう。

シートに座り、ドアを閉める。キーを捻ってエンジンを掛け、ギアを ’D’ レンジに入れてスタートするところは標準のゴルフと何ら変わりない。多くの電気自動車がそうであるように、アクセルを踏み込めば力強い加速を見せてくれるが、キーンと言うような特有の金切り声を発することは無く、ほかのクルマと比べても静かでスムーズな加速を披露してくれた。

コーナリング時もドライブ・トレインの素性が良いおかげで、非常に楽しく運転することができる。

また中心に318kgのバッテリーが積み込まれていることによって、予期せぬ事ではあったが、シャシー・バランスが向上している。このおかげで今までのゴルフにはなかった、独特な味わいが付加された。

短い周期で繰り返されるような、路面の畝にも目を見張るほどの追従性を見せる。どんな動作をとっても、適切なバネ下重量や気持ちのよいステアリング・レスポンス、そして長い歴史から学んだ揺るがぬ技術力をもって、見事に仕事をこなすのである。

さすがに英国の悪名高き路面では、速度を出した際のロードノイズが目立ったが、これもそう遅からず改良されるはずだ。

e-ゴルフのトランスミッションには、回生ブレーキを目的とした3つのモードがあり、そのどれもががなめらかで、もっともハードな ’B’ を選んだとしてもBMW i3のようにシビアな効き方はしない。

リチウムイオン・バッテリーには8年間、あるいは16万kmの保証がつく。フォルクスワーゲンいわく、e-ゴルフに採用したバッテリーは10年間使用したとしても、その80％程度までしか性能が低下することは無いのだそうだ。

ターゲットとするのは年間1万4000kmから1万5000km程度使用するユーザーだ。英国では標準の3ピンのソケットで充電する場合、満充電までは13時間、3.6kWの場合は満充電まで8時間掛かるという。また急速充電を行う場合は、全体の80％を充たすのに35分掛かるというのがフォルクスワーゲンの公表する充電時間となっている。

■「買い」か?

e-ゴルフの車両価格は、英国で日産リーフを買った場合とほとんど同じであるが、e-ゴルフの方がリーフより洗練度が高いし、ドライブ・トレインの出来も良い。それに運転していて、活き活きとした気持ちになる。

バッテリーがどのように消費され、エネルギーがどれほど生成されているかを眺めながら走るのは実に楽しいものだった。

航続可能距離が145kmというのは平均には及ばないのだが、それでもバッテリー駆動であることを忘れさせるほど洗練されている点は、この車を魅力的なものとする大きな長所だといえる。

(ヒルトン・ホロウェイ)

フォルクスワーゲンe-ゴルフ

価格	£25,845(447万円)
最高速度	140km/h
0-100km/h加速	10.5秒
燃費	–
CO2排出量	0g/km
乾燥重量	1510kg
エンジン	モーター
最高出力	115ps
最大トルク	27.5kg-m
ギアボックス	シングル・スピード