欠点を上回る魅力 アームストロング・シドレー・サファイア236 ライレー・パスファインダー 後編

公開 : 2022.11.19 07:06

1950年代にブランド末期を彩った2台。自由でおおらかだった時代の上級サルーンを、英国編集部がご紹介します。

シンプルで個性的なボディライン

技術者のジェラルド・パーマー氏が設計したライレー・パスファインダーのシャシーには、パナールロッドを固定するブラケット溶接に欠陥があり、幾つかの事故を引き起こした。ディッチ(路肩の排水溝)ファインダーという、あだ名も引き寄せてしまった。

コイルスプリングとラジアスアーム、パナールロッドというアクスルの構造が悪いわけではない。生産工程の不備が原因だった。しかし、リア・サスペンションは程なくしてリーフスプリングへ変更されている。

ブルーのライレー・パスファインダーと、ホワイトのアームストロング・シドレー・サファイア236
ブルーのライレー・パスファインダーと、ホワイトのアームストロング・シドレー・サファイア236

合理化を理由に、BMCが当初から検討していたのだろう。1956年に、MkIIへ改良されたウーズレー6/90とともに更新された。

パスファインダーの滑らかで無駄のないボディラインは、個性的で好ましい。装飾的な要素は殆どなく、ブルーのツートーンが良く映える。16インチ・ホイールとのバランスも良く、昔のブリキのトイカーを拡大したようにも見える。

ホワイトのアームストロング・シドレー・サファイア236の存在感も大きいが、こちらのスタイリングも少しおもちゃっぽい。丸く膨らんだルーフラインは、リアシートへ帽子をかぶったまま乗れることを求めた、ディレクターの指示だったという。

ドアは前後とも90度まで大きく開く。弧を描くトランクリッドは大きいが、荷室は想像より小さい。

乗員空間には2台とも余裕があるが、シートベルトやステアリングコラムから伸びるレバーなど、現代的な装備は備わらない。人間工学という考えが、充分に進む前に生まれたクルマだ。

上級感を醸し出すウッドのダッシュボード

パスファインダーのステアリングホイールは大きく、駐車時などはテコの原理で必要な力を軽減してくれる。クロームメッキのホーンリングは、左右に傾けることでウインカーのスイッチも兼ねる。

ウッドパネルのダッシュボードが、上級感を醸し出す。大きなスピードメーターとレブカウンターが、左右に振られ見やすいが、運転席側は足もとの空間が限定的。丸いメッシュのスピーカーは、温かい音色でラジオを聞かせてくれる。

アームストロング・シドレー・サファイア236(1955〜1957年/英国仕様)
アームストロング・シドレー・サファイア236(1955〜1957年/英国仕様)

今回ご登場願ったパスファインダーは、もともと南アフリカを走っていたという。レキシン・フェイクレザーでシートが仕立てられ、フロントはオプションだったベンチタイプ。定員は6名だ。

対するサファイア236は、ダッシュボードの中央にスイッチが集中して並ぶ。スフィンクスが描かれたステアリングホイール・ボスは、固定され回転しない。

アームストロング・シドレーは、マニュアル・トランスミッションも用意していた。だが3分の2のサファイア236には、「マニュマティック」と呼ばれる、シフトレバーで操作する4速セミ・オートマティックが搭載されている。オーバードライブ付きで。

近年では珍しい機構だから、どんな体験なのか興味が湧く。AP社によるシステムで、クラッチペダルは備わらない。交通状況へ合わせることは難しいが、変速を焦ってはいけない。交差点では、ニュートラルが長く続くことがあるため注意も必要だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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