ルノー・ルーテシア・ルノースポールカップ

公開 : 2013.11.26 18:51  更新 : 2017.05.29 19:22

誰でも簡単に速く走れるRSである、といってもそんなに大間違いではない。たぶん。その要因として大きいのは過給エンジンの動力特性とDCTによるイージードライブ、およびヒドくない右ハンドルの運転環境。ブレーキペダルの踏み応えがヘンでないこともふくめて、とっつきの運転しにくさがない。そのかぎりにおいては、フツーのルーテシアの速いヤツ、あるいはゴルフGTIのちっちゃいヤツ、といってもいい……かなと思ったら、そうでもなかった。簡単にいうと、もっとヤンチャなタイプ。

こんどのルーテシアRS、主にベース車両の都合により、車重は先代より少し重たい。30kgぐらい。ベース車両から車幅を拡げないというシバリがあったため、フロントサスペンションのアームやリンクの構成も同じ。つまり、転舵軸を可能なかぎりタイヤ接地面の中心点に近づける(と同時に垂直にも近づける)ための専用設計のタイプは使われていない。先代や、あと現行のメガーヌRSとは違って(使わなかったことにより片側あたり7kgの重量増が避けられた、とはインポーターの人談)。

車幅を拡げられなかったので、タイヤの幅はベース車用の上限と同じ。ということは、先代RSよりもナローに(215→205)。ピークパワーの額面は変わらず。または、違っても誤差の範囲。つまり今回、ラップタイムを前任モデルのそれよりもググッと縮めるための手っとり早い手段が使えなかった。なのにというか、実際には1周2kmのコースで1秒ほど速くなっている。スパ・フランコルシャンでは旧型に1周あたり3秒から4秒の差をつけたという。

技術アイテム関係でおもしろい話題としては油圧のバンプストップ機構=HCC(ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)。フロントサスペンションの圧側ストロークの最後の35mmの範囲で減衰力がギューッと強まるシカケがダンパーのなかにある。ラリー車用テクノロジーの市販バージョン。発泡ウレタンのバンプラバー(これも使われてはいる)と違って、縮みきったところからの反発がない……どころか伸び側の動きに対してもエクストラの減衰力を効かせることができるはずで、要はガツン系の衝撃入力への対策として有効。接地性アップ。

シャシースポールかシャシーカップか。こんどの日本仕様には両方ある。フツーに選べるようになったことは、とりあえずメデタイ。スポールが17インチでカップが18。あと、カップはアシがカタい。バネのレートでいうと、フロントが27%アップでリヤが20%アップ。フツーのルーテシア比ではなく、同じRSのスポールからそれだけ上がっている、ということに注意。あと、カップはスポールよりも車高が3mmだけ低いともプレスリリースには書いてある。ちなみに、スポール用の205/45R17とカップ用の205/40R18とでは後者のほうが5mmほど外径が大きい。少なくとも一般的には(スポール用のグッドイヤーもカップ用のダンロップも専用開発品)。

わが国の公道を走ってその路面のヒドさにビックリした経験をもつルノースポールの技術者いわく、「日本で乗るならシャシースポールのほうがいい」だったそうな。たしかにというかスポール、フツーに走らせたらRS物件であることが同乗者にバレないかもしれないと思ったぐらい、アシがカタくない。タイヤの路面への当たりも優しげ。こんどのルーテシアRSはオープンロード(簡単にいうと街なかとサーキットの中間領域)でのドライビングプレジャーを先代比ググッと重視したそうで、ナルホドこれがと思わされるものがあった。

カップのアシはわかりやすくカタい。なんかやってあるクルマであることは、たぶん誰を乗せてもすぐバレる。しかしこれが不快かというと……。日本でルノースポール物件を買いたがる人たちの多くまたはほとんどにとって、この程度は全然、許容範囲内。乗員に対してホントにキツい乗り心地というものに関して、ルノースポールの技術者は経験値があまりないのではないか(笑)。

それと。Rの小さいコーナーが続く区間をちょっとかもっと高めの横G上限設定で走るような場合、車内の平穏度はむしろカップのほうが高い。そういう状況で同乗者の上半身やアタマをグラグラさせないで運転するのが容易、といえばいいだろうか。なので、いちがいにスポールのほうがカップよりも快適だとはいえない。走る道や運転のしかた(や上手さ)によって違ってくるところが少なからずある。

タックイン等を使ってクルマの向きをイッキに変えて、みたいな運転を、こんどのルーテシアRSは好む。または、そっち方面への適性が高い。どうも(逆にいうと、ジワーッとブレーキングしながらハンドルをきってきって……型の運転だとビミョーにしっくりこない感あり)。そういう運転に対してクルマの動きがよりオオゲサに出るのは、アシがカタくないスポールのほう。両方を乗り較べて「カップよりもこっちのほうがおもしろい!!」と思う人も、なかにはいるかもしれない。

(文・森 慶太 写真・花村英典)

ルノー・ルーテシア・ルノースポールカップ

 

ボディーサイズ 全長×全幅×全高=4105×1750×1435mm
ホイールベース 2600mm
車重 1280kg
駆動方式 FF
エンジン 1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション 6段AT
最高出力 200ps(147kW)/6000rpm
最大トルク 24.5kg-m(240Nm)/1750rpm
タイヤ (前)205/45R17(後)205/45R17
燃費 –km/リッター
価格 299万円

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