ポルシェ911カレラSカブリオレ

公開 : 2012.02.10 14:36  更新 : 2017.05.29 19:07

■どんなクルマ?

ポルシェ911カレラSカブリオレは、最新の911カレラSクーペのオープントップ・バージョンで、来月には英国市場へ投入されるモデルだ。クーペ・モデルと同様、前モデルに対して、ホイールベースが若干長く、トレッドが広がり、かなり軽くなっている。また、パワフルになったにもかかわらず、燃焼効率は向上している。その重量は、先代よりも45kgも軽くなったが、ポルシェは捻り剛性は18%向上したといっている。

79,947ポンド(959万4000円)の911カブリオは3.4リッターのフラット6から345bhp、32.2kg-mのパワー、トルクと、0-100km/hが5.0秒のパフォーマンスを持つが、89,740ポンド(1,076万8000円)の911カレラSカブリオは395bhp、44.3kg-mを発揮する3.8リッターのエンジンが搭載され、0-100km/h加速も0.5秒速い。

基本的には7速マニュアル・ギアボックスが組み合わせられるが、ディーラーで「ドッペルクップリングスゲトリーベ」と正しく発音できるのであれば、シュツットガルトのメーカーに素晴らしいデュアル・クラッチ・トランスミッションをオーダーすることができる。PDKは、最高速度こそ少し落ちるが、0-100m/h加速のタイムを速くし、且つ燃費が改善される。また、燃料効率については、すべての911カレラにスタート・ストップ・システムが採用されている。

PDKを装備した911でも感動しないのであれば、オプションのスポーツ・クロノ・パッケージを選択することができる。それは「スポーツ・プラス」モードであれば、0-100km/hを4.3秒で駆け抜け、パフォーマンスをよりシャープにするものだ。

■どんな感じ?

構造的にポルシェ911カレラSカブリオレはクーペよりも若干低い。しかし、その違いは数mmだ。インテリアも、いくつかのパナメーラの手法が取り入れられたデザインのクーペと大差ない。ソフトトップは「パネル・ブロー・トップ」と呼ばれる新しいもので、複合プラスティックとファブリックのルーフがマグネシムとアルミで出来ているフレームにマウントされる。このソフトトップは、旧いタイプの多層ファブリックでは成し遂げられなかった、クーペと同じルーフラインをもたらすことに成功している。ルーフの開閉は、センターコンソールにあるボタンを押すだけという簡単なもので、13秒後には、ソフトトップはコンパートメントのリッドの下にキチンと収められることになる。

911カレラSカブリオレは、コクピットからその上げ下げを操作できるウインド・ディフレクターによって、風の巻き込みを抑えることができる。もちろん、すべての風やノイズが無くなるわけではないが、その効果は劇的だ。

911Sカブリオレはクーペの50kg増でルーフをなくしただけであって、大部分の路上で巧で落ち着いたハンドリングを見せる。スカットル・シェイクはほとんど感じない。少なくとも、グラン・カナリア島でのわれわれのテストの間は、剛性不足を感じることはなかった。多少荒れた路面でも、ポルシェのアクティブ・サスペンション・マネージメントのお陰で、クルマが不安定な状況い陥ることはなかったのだ。

もちろん、すべての状況において、クローズドトップと同じというわけにはいかない。クーペとカブリオレがまったく同じだと感じるのであれば、それはドライバーのセンスを疑わなければならない。

395bhpのパワーは非常にスムーズに発揮されるため、しばしば本当にその回転域に達したのかと疑いたくなるほどだ。そして、エグゾースト・ノートはオペラ歌手を嫉妬させる音域を見せる。街中のクルージングでは、ドライバーの肩越しにちょうど良いサウンドが、オープンロードでは魅惑的な変化のあるサウンドが耳に伝わってくる。

ブレーキも秀逸で、新しい電子制御のステアリングも、すでにどこかで書かれているように信頼できるものだ。

われわれのテスト車両はPDKを装着していた。シフトダウンした時のブリッピングは気持ちが良いほど正確だ。マニュアル・トランスミッションと同じぐらいレベルの動作を、オートマチックにおこなってくれる。また、ダブル・クラッチ・ギアボックスの特徴である「惰力走行」時の燃料の節減も取り入れられている。ストッロルを緩やかに放すとギアを開放し、再びブレーキやスロットルに足をかけるやいなやギアを繋ぐというシステムだ。サラブレッド・スポーツカーを、エンジン・ノイズなしに走らせるというのは不思議な感覚である。

スタート・ストップ・システムも同様に驚かされる。ポルシェのシステムは非常に賢いが、しかし、スポーティでなく静かなクルマが望みでないというのであれば、それは少々押付けがましいと感じることもあるだろう。

■「買い」か?

9,000ポンドのプライスタグも、あなたを遠ざけるものではない。ポルシェが前作と比較してカブリオレに施した改善や微調整は、それだけの価値があると断言できるし、この成熟したスポーツカーに相応しい価格だとも。911カレラSカブリオレは「間違いなく愉しい」1台だ。

傍目には豪華にリフレッシュされソフィスティケートされているが、悪魔的な輝きも潜んでいる。それを引き出すことは、価値のある経験だ。ルーフをオープンにして、あなたの後ろでフラット6の響き渡るサウンドを聞きながら、スロットルを煽る。それは、ぞくぞくもするし、思わず笑みがこぼれてしまうほどでもある。

クーペは、純粋にスポーツドライビングを愉しみたい人のものであっても良い。その一方で、カブリオレが海をバックにポーズをとるためのクルマであるのなら残念だ。しかし、このように完璧なコンバーチブルに接すると、どう扱って良いかわからないというのも事実である。

(マット・バート)

ポルシェ911カレラSカブリオレPDK

価格 118,411ユーロ(1,184万円)
最高速度 298km/h
0-100km/h加速 4.5秒
燃費 13.5km/l
Co2排出量 210g/km
乾燥重量 1485kg
エンジン 3899ccフラット6
最高出力 395bhp/7400rpm
最大トルク 44.3kg-m/5600rpm
ギアボックス 7速デュアルクラッチ

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