胸が苦しくなるほど「完璧」 アストン・ヴァンテージ フェラーリ・ローマ ポルシェ911 3台比較(2)

公開 : 2024.11.02 09:46

歴代最強の665psで更新されたヴァンテージ 遠くから気分を高揚させる姿 ペダルとステアリングが超絶に融合した911 躍動的なV8エンジンを宿す壮大なローマ 英編集部が3台を比較

不気味なほど落ち着いている911 ターボS

ドライバーが全力を尽くすほど、ポルシェ911 ターボSの類まれなポテンシャルが顕になる。操縦性は極めて鮮明で、挙動を予想しやすい。スタビリティ・コントロールを、完全にオフにする必要もない。

不意にトラクションが抜けたり、豪快にフロントノーズを持ち上げる、なんて素振りはない。ピタリと路面へ追従し、不気味なほど落ち着いている。少し速めのペース、能力の7割程度で走らせている限り、ピュアな体験に魅了される。

ポルシェ911ターボS(英国仕様)
ポルシェ911ターボS(英国仕様)

9割へ迫ると、驚異的なパフォーマンスに圧倒される。それまで隠されていた、崇高な動的能力が明らかになる。しかし、最も楽しみたい8割前後での没入感がやや乏しい。

911 ターボSが、この3台で最速なことは間違いない。だが、グランドツアラーとして絶対的な速さ以上の何かを求めるなら、若干物足りないことも否めない。

ヴァンテージへ乗り換えると、ステアリングホイールへ伝わる情報量が乏しいことへ気付く。感触を豊かにするため、アストン マーティンは内部構造を改めたにも関わらず。

V8エンジンの暴力的なトルクも、ちょっと大味。ポルシェのように、レブリミットを追い求める個性が欲しいと思ってしまう。

フェラーリ・ローマは、ブレーキが少し過敏。これには、最後まで慣れなかった。そのかわり、F154型ユニットは回すほどスイート。0-100km/h加速は3.4秒で、911 ターボSの2.7秒に届かないにも関わらず、変速する度に鳥肌ものの興奮を誘う。

躍動的なV8エンジンを操るローマの壮大さ

アクセルペダルのストロークは、量産車では最長の1つ。スプリングの効きも好ましい。これは、フェラーリの特長といえる。この繊細さを右足で感じつつ、躍動的なV8エンジンを操る感覚は壮大でしかない。

公道での鋭さを求めるなら、マネッティーノ・ダイヤルを回しレース・モードを選ぶのが良い。トラクション・コントロールの介入が抑えられ、熱狂的な走りに興じられる。

フェラーリ・ローマ(英国仕様)
フェラーリ・ローマ(英国仕様)

911 ターボSやヴァンテージでは、アクセルペダルを蹴飛ばせば一気呵成に加速していくが、そのプロセスは似ている。しかしローマの場合、ボディのテールを僅かに沈め、トラクションのギリギリを攻めているような感覚がある。

毎回異なるカーブの出口で、アルミ製のペダルを押し倒す度に、ローマはエネルギッシュに応える。残りの2台は、ここまで情緒的ではない。

期待以上の晴天な午後に、3台をじっくり乗り比べていたら、スタビリティが評価の大きな分かれ目なように感じてきた。加速時の安定性だけでなく、操縦性全般で。

明らかに、911 ターボSはそれを強みとしている。対してヴァンテージとローマは、あえて僅かに一歩引いているようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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