2ドアボディは盗難の恐れも ラリーで大活躍 フォード・エスコート Mk1 UK版中古車ガイド(1)

公開 : 2024.02.10 17:45

欧州でヒットし、ラリーやレースで大活躍した初代エスコート 人気上昇で近年の取引価格は高騰中 2ドアボディは盗難の恐れも 英国編集部が魅力を再確認

安価な1100から価格が2倍のRS1600まで

英国フォードが設計・開発を進めた初代エスコートは、それまでにない小型車だった。車重は約800kgと軽量でありながら、先代のコンパクト・サルーン、アングリアよりボディサイズはひと回り以上大きく、ベーシックなエンジンでも30%以上強力だった。

スタイリングは洗練され、空気抵抗を示すCd値は0.40。空力特性にも優れていた。フロントガラスは緩やかにカーブを描き、ホイールは12インチと小ぶりで、車内空間は広く取られていた。

フォード・エスコート(Mk1/1968〜1975年/英国仕様)
フォード・エスコート(Mk1/1968〜1975年/英国仕様)

4速MTは、変速時にギアの回転数を合わせるシンクロが標準。車内の換気機能は有能で、ステアリングラックは高精度なラック&ピニオン。当時は珍しくなかった、シャシーの定期的なグリスアップは必要なく、約8000km手間いらずな点も魅力だった。

人気に伴い、ラインナップは拡大。ベースグレードのエスコート 1100から、価格が2倍するエスコート RS1600まで、19種類も提供された。

デラックス・グレードを選ぶと、丸いヘッドライトとラバー製のフロアマットが標準装備。スーパーには長方形のヘッドライトが組まれ、カーペットが敷かれた。

エスコート 1300GTでは、大径バルブと高圧縮比、ウェーバー・キャブレター、ハイリフトカム、4股の排気マニホールドでエンジンを増強。クロスレシオのMTに前輪ディスクブレーキ、スポーツサスペンション、ワイドなホイールなどで走りを引き締めた。

取引価格は高騰中 2ドアボディは盗難の恐れも

エスコート・ツインカムでは、ツイン・ウェーバーキャブとクロスレシオのMT、リアはドラムのままながら大径ブレーキなどで更に武装。当時の試乗テストでは、グレードを問わずステアリングとシフトフィールを絶賛。特に1300GTは、高評価を得た。

フォードのモータースポーツ部門は、リミテッドスリップ・デフやマグネシウム製ホイール、燃料インジェクション・システム、FRP製ボディパネルなどを提供。ラリーやレースへの参戦を、手厚く後押しした。

フォード・エスコート(Mk1/1968〜1975年/英国仕様)
フォード・エスコート(Mk1/1968〜1975年/英国仕様)

ただし、ハイスペックなモデルほど評価を伸ばしたわけではない。RS1600では、不足ないパワーと抑えられたボディロールによる圧巻の操縦性を得つつ、荒れた路面における高速域での安定性が犠牲になっていた。

そんな初代エスコートだが、世界的な人気に伴い取引価格は高騰中。2015年の時点では、極上コンディションのRS2000が5000ポンド、平均的な状態の1300Eなら1000ポンド程度で探すことができた。しかし最近は、到底その予算では入手できない。

精巧な復刻モデルも、英国では提供されている。予算が潤沢にあるなら、MST社のウェブサイトを訪れてみてはいかがだろう。

部品の流通は、高性能なモデルならさほど悪くない。エスコート・メキシコやRS2000のレプリカを作る目的で、2ドアのボディは盗難されることも。ベーシックなグレードは珍しく、部品の入手が難しくなっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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