フェラーリ・ディーノ復活か

公開 : 2015.06.05 22:50  更新 : 2017.06.01 02:09

プランシング・ホースのモデル・レンジに、あのディーノの名を冠したモデルが加えられるかもしれない。予想される価格は、488GTBの£183,974(3,500万円)よりも20%ほど安いおよそ£150,000(2,800万円)程度になるとも考えられる。

40年の間にわたって途切れてきたビッグ・ネームの復活は、モンテゼモーロに代わってフェラーリのボスとなったセルジオ・マルキオーネの提案によるものだが、AUTOCARのインタビューには「その時期がいつとは答えられない」とコメントしている。

ディーノのネーミングは1970年代から1980年代にV6あるいはV8ユニットを搭載したスモール・フェラーリに与えれていたもので、現在フェラーリはV6ユニットを搭載するエントリー・モデルとして考えているという。マルキオーネは、今後のフェラーリの戦略について、ボリュームを増やすか、価格を下げるか、あるいはディーノのバッジを付けたサブ・ブランドを送り出す必要があるとしている。

「われわれが500psのフェラーリを世に送り出す可能性は否定しない。しかし、それは決して安いフェラーリということではない。フェラーリというブランドはユニークであり保護されるべきものだ。例えば、市場で500台以上の需要があったとしたら、500台を切るぐらいの生産をするのが最適と考えている。フェラーリは常にエクスクルーシブなブランドであるべきなのだ。」とマルキオンネは語った。

これらのコメントからしても、新しいディーノが、カルフォルニアT、488GB、F12ベルリネッタ、FFという4台の現行ラインナップに新たに加えられるかも知れないことを示唆している。

ひとつの案としては、2018年に登場するであろう現行のカルフォルニアTの後継車としてディーノをリリースするということも考えられたようだ。しかし、カルフォルニアTは、快適なコンバーチブルを望む層をフェラーリに取り込むために必要なモデルであり、一部のファンから確実に支持を受けているモデルだ。従って、カルフォルニアTの後継としてディーノを位置づけることの可能性は薄い。

また、カルフォルニアTがフロント・エンジンのコンバーチブルであるのに対し、ディーノはリアル・スポーツとしてミドシップにエンジンを搭載するモデルになるということだ。つまり、ディーノの先達のルールに従ったものになる。そして、ポルシェ911GT3 RSといったライバルと戦うためにも、非常にシャープなクルマになるという。

確かにそのプライスはカルフォルニアTに近く、絶対的には安いものとなるが、マルキオーネは決してエントリー・レベルのフェラーリではないとしている。

エンジンは恐らくV6となるだろう。また、488GTBやカルフォルニアTで採用されたアイドリング・ストップを持つことになる。458イタリアから488GTBへの発展でダウンサイジングとターボ化をしたように、このV6ユニットもターボ・ユニットとなる可能性は大きい。既に、フェラーリ内部ではV6ユニットの実現の可能性を調査しており、その結果は「非常にポジティブ」なものであったという。既に、フェラーリは、フィアットクライスラー・グループ傘下のマセラティのためにツインターボのV6ユニットを提供している実績もある。

とりわけ、CO2の削減という課題が、ダウンサイジングとターボ化に拍車をかけているとマルキオンネは語る。特に、アメリカで販売するためには、年間7,000台を販売するフェラーリにとって、エミッションに対する厳しい法律が適用されることになる。そして、ディーノがフェラーリとしても生産台数のかなりの割合を占めるのであれば、フェラーリ全体のCO2排出量の平均を大きく下げることになると予測できる。もちろん、フェラーリが今後生産台数を増やして7,000台以上を生産するメーカーになるのかどうかは別問題ではある。

新しいV6ユニットの500psというのは、911GT3 RSを意識した数値であると思われる。0-100km/hが3.5秒、トップスピードが322km/hというパフォーマンスがひとつの目安となろう。このレンジのスポーツカーとしては、ポルシェ911GT3 RSの外にも、アストン・マーティンV12ヴァンテージS、メルセデス-AMG GTブラックシリーズ、マクラーレン570Sなどが競合としてあげられる。

ディーノの由来について
エンツォ・フェラーリの長男がアルフレード “ディーノ” フェラーリだ。1932年に生まれた彼は、筋ジストロフィーという病にかかって24歳の若さでこの世を去る。1968年にF1チャンピオンとなったマイク・ホーソンが駆った206SPに搭載されていたV6エンジンこそ、このアルフレードの発想によるものだったとされている。

1968年に、フェラーリはピニンファリーナがデザインした2ℓV6エンジンと搭載したプロダクション・モデルにディーノ206GTというネーミングを与える。このディーノは、その翌年には2.4ℓエンジンが与えられた246GTに発展する。このディーノには、フェラーリの文字も、プランシング・ホースのエンブレムも与えられなかった。また、そのエンジンのカム・カバーのもディーノの文字が刻まれているだけであった。

ディーノ246GTは、1974年にベルトーネがデザインした2+2モデル、308GT4にバトンタッチし、1976年まで製造がされた。

ディーノは現代からすれば非常に控えめなパフォーマンスではあるが、今なおフェラーリ・エンスージァストから愛されてやまないモデルである。

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