アリエル・アトム4 試乗 目的地はシンクロトロン 英国最高の頭脳が集まる場所 中編

公開 : 2019.09.22 11:50

新たにホンダ・シビック・タイプRのエンジンを与えられたアリエル・アトム4に乗って、スピードと重量に関する究極の研究施設とも言えるシンクロトロンを訪問しました。当然のように風には見舞われましたが、素晴らしい旅となった模様をお送りする中編です。

もくじ

英国最高の頭脳が集まる場所
ダイアモンド・ライト・ソース
お楽しみの時間
減速の必要性

英国最高の頭脳が集まる場所

ハーウェルに広がるキャンパスはおそらく英国最高の頭脳が集まっている場所だろう。もともとは英国空軍の基地だったこの場所からは、ノルマンディ上陸作戦の前夜、偵察任務を帯びた空挺兵たちがフランスに向けグライダーで出発しており、第2次世界大戦後、科学的な研究拠点へとその姿を変えている。

ここから英国の原子力研究所が始まったのであり、英国、そして欧州初となる原子炉が建設されるとともに、研究所で理論物理学のトップを務めたクラウス・フックスは、ここでソビエトのスパイとして活動しながら、多くの先端技術情報を流し続けたに違いない。

アリエル・アトム4
アリエル・アトム4

ロス・ブラウンもここで英国原子力研究所の見習いとしてそのキャリアをスタートさせており、研究所で身に付けたフライス盤の加工技術を使って、彼はバイチェスターにあるマーチ・エンジニアリングでモータースポーツと初めての係わりを持つこととなった。

原子炉はすべて閉鎖されているが、いまやこのキャンパスは数多くのテクノロジー企業の拠点となっており、そのなかにはラザフォード・アップルトン・ラボラトリーや、宇宙における通信やビジネス展開を研究する欧州宇宙機関のECSAT部門も含まれている。

ダイアモンド・ライト・ソース

だが、そのなかでも最大のスペースを占めているのがダイアモンド・ライト・ソースであり、そのために今回われわれはここを訪れたのだ。

アトムがこの建物へと近づいて行くと、最初の問題が明らかとなった。つまり、何機かの衛星が上空を通過するタイミングを除けば、この施設の巨大さを実感することなど到底出来ない。

こうした電磁石がこの施設のライトビームを制御している。
こうした電磁石がこの施設のライトビームを制御している。

近くから見ると、確かにシンクロトロンが設置された建物は円形をしているものの、地上からでは740mもの外周を持つこの建造物の一部しか目にすることは出来ないのであり、この巨大な銀色のドーナツとも言うべきその実際のサイズを知るには、Google Earthによる衛星写真が必要となる。

2007年にオープンしたダイアモンド・ライト・ソースでは、900人ものひとびとが世界中から依頼された科学実験を行うために働いている。有難いほど暖かい巨大なホールを巡るツアーに参加すると、間近でビームラインを見るだけでなく、ここで行われていることをより理解できるようになった(番外編参照)。

お楽しみの時間

だが、ここでもアトムは注目の的であり、屋根付き通路の下に停めておいたこのクルマのまわりには、直ぐに好機の眼差しをしたスタッフたちが集まってきた。さらに申し添えておけば、0-100km/h加速2.8秒というこのクルマの加速力は、理論物理学者たちをも驚かせるに十分なものだった。

それでも、写真撮影と周回路を低速で何周かドライブすると、そろそろアトムをより相応しい場所へと連れ出す時間が来たようだ。

世界基準の科学的批評にさらされるアトム
世界基準の科学的批評にさらされるアトム

バークシャー丘陵の一角にあるというハーウェルのロケーションは、英国南部最高のドライビングロードのいくつかに近いということを意味しており、つまりはA34号線へと戻るまでに、このクルマにより相応しいウエスト・イルスリーやファーンバラ、さらにはワンテジを巡る周回路を楽しむことができるということだ。

まだ数多くの水たまりが残っているが、雨はもうほとんど気にならない程度にまで弱まっている。気温が高くドライ路面のサーキットこそアトム4のホームグラウンドだと言えるが、それでもこのクルマは滑りやすいB級路で見事に水たまりを除けながら前へと進んで行く。

 

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