【世界初のDOHC量産マシン】フランスが生んだサルムソンGS8ロードスター 前編

公開 : 2020.03.01 07:20  更新 : 2020.12.08 10:55

世界で初めて、ツインカム・エンジンとレースカー仕様をベースとしたシャシーが組み合わされた量産モデルが、サルムソンGS8ロードスター。今はなきフランスのメーカーが戦前に生み出した、貴重な1台を振り返ります。

もくじ

航空機のエンジンで成功したサルムソン
第一次大戦後は自動車へとシフト
オリジナルエンジンのサイクルカー
レーシングシャシーを備えたGS8

航空機のエンジンで成功したサルムソン

text:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
かつてフランスに存在していた、偉大な自動車メーカーの1つ、サルムソン社。会社は一度倒産するも、3年ほどは生きながらえた。生産工場はルノーの支配下に置かれながら、サルムソンは最後のモデル、2300Sを1953年に生み出す。

2300Sは、1955年のル・マンへ出場。続く1956年と1957年にも参戦している。サルムソンとして最後に誕生した2300Sは、ブランド当初から受け継いでいたスポーツマインドを忘れてはいなかった。実にサルムソンは様々なレースで550勝を挙げている。

サルムソンGS8ロードスター(1927年)
サルムソンGS8ロードスター(1927年)

1920年まで振り返れば、グランプリ・レーサーとロードゴーイング・ツアラーとの結びつきも見えてくる。それを象徴するモデルが、サルムソンGS(グランドスポーツ)8ロードスターとなるだろう。ツイン・オーバーヘッド・カム、DOHCを備えた、1100ccエンジンを搭載したクルマだ。

そもそもサルムソンは蒸気機関やポンプの生産で創業した会社で、19世紀の終わりにガソリンエンジンの開発・生産へとシフト。創業者のエミール・サルムソンと、ビジネスパートナーを組んでいたジョージ・カントン、ゲオルグ・アンネは、黎明期だった航空機分野にも進出。規模拡大を進めた。

飛行機の動力としてエンジン開発を進め、技術的な課題に取り組んだサルムソン。混合気を生み出すバレルを取り付けたエンジンを、1908年に量産化した。

第一次大戦後は自動車へとシフト

1903年にライト兄弟がキティーホークの地で初飛行を成功させてからわずか8年後、サルムソン製エンジンを搭載した飛行機は初フライト。1911年にはインドのイラーハーバードで郵便用の飛行機として運行を始めた。

さらに10年後、サルムソン製の9気筒263psのサルムソン2エンジンは、フランス空軍の偵察機で3割を占めるほどになった。だが第一次大戦が集結すると、航空機業界から手を引いたサルムソン。拡大を続ける新しいエンジニアリング分野、自動車の製造へと事業を移す。

サルムソンGS8ロードスター
サルムソンGS8ロードスター

フランス・パリの郊外にあるブーローニュ・ビヤンクール工場は、1919年に自動車開発へと目的を変更。可能な限り早く量産体制に入るべく、小型で安価なクルマ、サイクルカーを生産していた英国のGN社とライセンス契約を結んだ。

1919年10月に開催されたパリ・サロンには、自動車メーカーとして出展をこぎつけた。3カ月前に英国から技術図面を受け取り、基本的にすべてをゼロから生産したことを考えると、見事な仕事ぶりだったといえる。パリ・サロンへ出展した自動車メーカーは65社もあったことにも驚く。

パリ・サロンでも最も優雅なボディをまとったサイクルカーは、鮮やかなボディカラーに塗られていた。マーケティングの担当者は、カフェやレストランの駐車場へ計画的に駐車させ、露出を高めた。

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