【間に合わない?】WLTP新基準、メーカーは「苦戦」 燃費等の数値公表

2020.09.15

サマリー

2021年1月1日から欧州WLTPの新基準が施行されますが、メーカーは各モデルのCO2排出量や燃費数値の計算に追われ、公表期限を逃す可能性があります。細かい仕様変更によっても数値が変わるため、作業量は膨大です。

もくじ

複雑なCO2排出量・燃費計算
選んだ装備で数値が変わる
オプションが減る可能性も

複雑なCO2排出量・燃費計算

text:AUTOCAR UK編集部
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

業界コンサルタントのJato Dynamics社によると、自動車メーカーは2021年1月1日施行の新しいWLTP燃費基準に間に合うよう、全モデルのCO2排出量と燃費を公表するのに「苦労している」という。

「これはテストそのものの問題ではありません。顧客やディーラーに伝えるCO2排出量と燃費の膨大なデータ量が問題であり、一部の自動車メーカーはそれに苦労しているのです」

環境性能が基準に達しないメーカーには罰金がかけられる。
環境性能が基準に達しないメーカーには罰金がかけられる。

Jatoの欧州販売部門の責任者であるオリビエ・ペジスはこう述べている。

「また、ロックダウン中にオフィスが3ヶ月間閉鎖され、作業にかけられる時間が減るという問題もあります」

ヨーロッパでは毎年約1500万台の新車が販売されているが、それぞれが独自の部品仕様を持ち、大部分は購入過程で何度も仕様を変更するため、関連するデータは膨大なものになる。

「これらの数字を入手できるのはOEM(供給元の自動車メーカー)だけなので、すべての新車には、メーカーから提供されるCO2排出量と燃費の数字が必要になります。精度の高い情報が求められています」

また、完成車のCO2排出量は、メーカーの平均CO2排出量にも関係している。目標値は、様々な条件にもよるが、約95g/kmであり、制限値に違反した場合には、EUから巨額の罰金が科せられることになる。

グレードによって異なるスペックもCO2排出量と燃費の数値に大きな影響を与える。この数値は、クルマに課せられる道路税と法人税を決定することになる。

「これは非常に複雑で、誰にとっても初めてのことなので、メーカーによって得意不得意があっても不思議ではありません」

選んだ装備で数値が変わる

AUTOCARが接触したある大手自動車メーカーの関係者は、価格表に新しいWLTP数値を導入するプロセスは「困難」であったと述べた。

「しかし、他のメーカーはそれほど早くから始めたわけでもなく、もっと難しいと感じているかもしれません」

装備によって重量や空気抵抗などが変わってしまう。
装備によって重量や空気抵抗などが変わってしまう。

CO2排出量と燃費の数値を正しく取得できなかった場合、購入者に思わぬ問題をもたらすだろう。

「個人の購入者にもさまざまな弊害を与えるでしょうが、特にCO2排出量を削減すると顧客や投資家に宣言している企業にとっては大きな問題となるでしょう」

これは受注から納車までの間に細かく仕様が変更されるため、実際に起こりうる可能性が高い。バッテリーやタイヤのブランド変更、部品の再設計など、小さな仕様変更やマイナーチェンジでも、CO2排出量や燃費が変わってしまう可能性があるのだ。

購入者はこれまで仕様変更に慣れ親しんできたが、1月1日以降にWLTPが義務化されると、それができなくなるかもしれない。

ペジスは次のように語っている。

「想像してみてください。ディーラーのコンフィギュレーターで、CO2排出量が例えば99g/kmとなっているクルマを買うとします。しかし、仕様変更によって実際に納車されたときには102g/kmとなり、維持費が上がっています」

公式の数値から乖離したクルマが増えた場合、訴訟問題につながるかもしれない。また、1~2g/kmというわずかな誤差を理由に、販売停止となる可能性もある。

 

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