【盛者必衰】セダンは消えていくだけ? まだ見捨てるべきではない理由

公開 : 2021.01.31 05:45  更新 : 2021.10.22 10:13

2020年に登場した新型はわずか。セダン廃止は進む一方ですが、筆者はまだ見捨てるべきではないと考えます。

新型セダンほとんど登場せず

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

2020年には日本車でもさまざまな新型車が登場したが、そのラインナップを見ると、特定のカテゴリーが人気を高めた。

軽自動車ではルークス/eKスペースeKクロス・スペース/タフト/Nワン、コンパクトカーはヤリス/フィット/ノート/ソリオ、SUVはキックス/ヤリス・クロス/ハリアー/MX-30、ステーションワゴンのレヴォーグなどが発売されて話題になっている。

日産フーガ(2009年の登場からフルモデルチェンジなし)
日産フーガ(2009年の登場からフルモデルチェンジなし)    日産

そして2020年における国内の新車販売状況を見ると、最も多く売れたのは37%に達する軽自動車で、次は25%のコンパクトカー、15%のSUVとミニバンという構成だ。軽自動車/コンパクトカー/SUVは、好調に売れるカテゴリーだから、新型車も活発に投入された。

その一方でセダンは元気がない。フルモデルチェンジや新規投入車種は、アコードとミライ程度だ。

ただしアコードは、北米仕様のフルモデルチェンジから約2年半を経過した後、日本でも一新された。もはや新型車とは呼べないだろう。約2年半にわたり、海外では新型アコードを販売しながら、日本では安全装備や衝突安全性能が劣る旧型を売っていた。この時間差も気になる。

ミライは画期的な燃料電池車だが、水素を充填できる水素ステーションの数が少ない。以前よりは増えたものの、全国に約140か所だ。給油所(ガソリンスタンド)は、燃費性能の向上などによって1990年代中盤に比べると半減したが、それでも約3万か所が営業している。

今は水素ステーションも、燃料電池車を所有できるユーザーも限られる。今後水素ステーションは、燃料電池車の売れ行きとあわせて、徐々に増えていく。そうなると現時点では、ミライも好調に売れる車種ではない。

車種の廃止も加速

国産セダンは、新型車が乏しいだけでなく、車種の廃止まで進んだ。直近でも、マークXレクサスGS、ティアナ、グレイス、シビックセダンは既に廃止された。今後はプレミオ&アリオンとシルフィも生産を終える見込みだ。

これらの消えていくセダンには、かつて高い人気を誇った車種も多い。マークXはマークIIの後継で、同様にプレミオはコロナ、アリオンはカリーナ、シルフィはブルーバードの後を受け継いだ車種になる。

トヨタ・マークX(絶版)
トヨタ・マークX(絶版)    トヨタ

とくに絶滅寸前なのが5ナンバーサイズのセダンだ。グレイスとプレミオ&アリオンがなくなると、カローラの継続生産車となるカローラ・アクシオのみだ。今の5ナンバー車は主に国内向けだから、5ナンバーセダンの消滅は、このカテゴリーが国内市場から撤退することを意味する。

なぜセダンは新型車が少なく、なおかつ生産を終える車種も目立つのか。この点をメーカーの商品企画担当者にたずねると、以下のように返答された。

「日本ではセダン離れといわれ始めてから、今では約20年を経過するが、同じような状況が海外でも進んだ。セダンの需要は世界的に下がり、SUVが増えている」

「そうなると新型車の開発でも、セダンは減ってSUVなどが中心になる。また最近は環境技術などの開発コストも高まり、新型車の開発を見直しているから、セダンの減少傾向も加速している」

日本では1990年代に入ると、3ナンバー車の税制不利が撤廃され、メーカーは海外向けの3ナンバーセダンを国内でも売るようになった。これが裏目に出て、セダンは売れ行きを落とし始めた。

1996年頃からはミニバンも急増しており、1998年には軽自動車規格が今と同じ内容に刷新されて商品力を高めた。こういったミニバンや軽自動車の好調な売れ方も、セダンの衰退を促進させている。

最近ではフォードもセダン市場からの撤退を明らかにした。海外におけるセダン人気の低迷も、新型車の減少や車種の廃止に結びついている。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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