【電動ラリークロス・マシン】スタード・フォード・フィエスタERXへ試乗 未来の興奮 後編

公開 : 2021.05.09 08:25  更新 : 2022.11.01 08:55

バッテリーで走るラリークロスマシンを開発した、レーシングチームのスタード。電動化技術が生むモータースポーツの未来を、英国編集部が体験しました。

バランスに優れ狙った通りに操りやすい

text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
激しく加速する、フィエスタERX。状態を理解するまでに数秒は要する。すぐにタイトなコーナーが迫る。ラリークロスだから、ターマックとグラベルとが入り混じり、楽しさをプラスしてくれる。

ありがたいことに、ブレーキは極めてパワフルで漸進的。左足の動きに同調するように、制動力が立ち上がる。

スタード・フォード・フィエスタERX(ラリークロス・マシン)
スタード・フォード・フィエスタERX(ラリークロス・マシン)

初めて走るラリークロス・コースのグラベルを、少し慎重に回る。再びターマックへ切り替わる直前、助手席のストールがアクセルペダルを踏み込む指示を出す。3基のモーターが、もう一度すべてのパワーを開放する。

今回許されたスタード・フォード・フィエスタERXの試乗は、3周のみ。勇気を振り絞るしかないが、素晴らしいセットアップと、気にすべきコーナーは4か所という覚えやすいコースで、2周目からは少しクルマの能力を探れるようになった。

凄まじいパワーに慣れることはなくても、扱いやすい。操縦性のバランスは高く、狙った通りに操れるような気がしてくる。ラリークロス・マシンらしく走らせられそうに思えてくる。

ドライビングポジションも丁度いい。時間が限られていて、シートやペダルの調整時間はなかった。筆者がストールと似た背格好だったのは好都合。身長の高い別のドライバーは、窮屈そうに運転していた。

背もたれはやや直立気味で、ステアリングホイールは手前にある。低重心に寝そべって運転するオンロードレーサーではなく、ラリーカーに近い。視界に優れ、コースも確認しやすい。

強烈な加速や軽いドリフトも楽しめる

ペダル位置は完璧。カーボンファイバー製の深いバケットシートと4点ハーネスが、身体をガッチリ固定してくれる。リッデン・ヒル・サーキットは短く、変速は不要。アクセルペダルとブレーキペダル、ステアリングホイールに集中していれば良い。

巨大なゴーカートと呼ぶには不適切かもしれないが、扱いやすい操作系のレイアウトで、想像以上に運転に馴染める。短い時間だったが、ラリークロス・マシンの本物の体験に迫れたと思う。

スタード・フォード・フィエスタERX(ラリークロス・マシン)
スタード・フォード・フィエスタERX(ラリークロス・マシン)

電動油圧式のパワーステアリングが備わり、レシオはクイックで重み付けも丁度いい。フィードバックも濃密で、見定めたラインを完璧にトレースできる。砂利だらけのグラベルでも、ターンインの食いつきは圧巻だ。

進入時のオーバーステアに気をつける必要はあるが、スリップからグリップが戻る変化も掴みやすく、修正はとても自然に行える。少し自信が付いた頃には、ふんだんなパワーとトラクションで、強烈な加速や軽いドリフトも楽しむことができていた。

フロント側より、リアモーターの方が2基で強力。アクセルペダルを踏み込めば、自然とテールは流れ出す。

ラリークロス用のサーキットは、深いワダチと穴ぼこだらけ。しかしテイン社製のサスペンションが見事に機能し、まるで舗装したての高速道路のように車内は滑らか。悪ふざけも許してくれる。

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