愛された「スーパーミニ」 フォード・フィエスタ47年の歴史 1つの時代の終わり

公開 : 2023.07.22 18:05

フォード・フィエスタの生産が2023年7月7日に終了しました。欧州、北米、そして日本でも愛された「スーパーミニ」の歴史を振り返ります。

たくさんの人と思い出を運んだクルマ

フォードフィエスタはもういない。

2023年7月7日、欧州向けの最後の1台がドイツの生産ラインから出荷された。ザールルイスの工場はEV生産に切り替えられようとしている。それは、1つの時代と誇り高きモデルライン、そしてわたし達ドライバーの多くが運転人生をスタートさせたクルマの終焉を意味する。

フォード・フィエスタの47年の歴史を振り返りたい。
フォード・フィエスタの47年の歴史を振り返りたい。

フォード・フィエスタは英国で最も売れたモデルとなるなど、1976年の発売当初から人気を博したが、2020年代初頭にある理由で突然その座から転落した。今回はそんなフィエスタの歴史を振り返り、おそらく長くなるであろう旅立ちへの餞(はなむけ)としたい。

プロジェクト・ボブキャット

フォード社内では、フィエスタは開発初期に「ボブキャット」と呼ばれていた。そしてフォードは「ブラボー」として売り出す寸前まで行った。「フィエスタ」も検討されたが、1950年代から1960年代にかけてGM傘下のオールズモビル88のステーションワゴンに使用されていた名称だったため、却下されることに。しかし、ヘンリー・フォード2世は粘り強くフィエスタの名を選んだ。その理由の1つは、このクルマがスペインで生産されることにちなんだものだった。

結局のところ、GMはフォードがフィエスタを名乗ることを問題視しなかったため、ブラボーから現在の車名に変更された。

フィエスタ(Fiesta)の名はスペイン語で「パーティ」「祝日」など賑やかな意味がある、
フィエスタ(Fiesta)の名はスペイン語で「パーティ」「祝日」など賑やかな意味がある、

新しいスーパーミニ

フィエスタはフォード初の前輪駆動車の1つであり、現在では一般に「スーパーミニ」と呼ばれる欧州Bセグメントの初のモデルである。

欧州の小型前輪駆動ハッチバックは目新しいものではなかったが(フィエスタ発売当時、ルノー5やフィアット127などがすでに発売されていた)、フィエスタはその普及に貢献した。その後の数年間で、数多くのメーカーが同様のモデルを投入している。

Bセグメントの小型車は、欧州では一般的に「スーパーミニ」と呼ばれる。
Bセグメントの小型車は、欧州では一般的に「スーパーミニ」と呼ばれる。

エンジン

1976年の発売当時、フィエスタには957ccと1117ccという珍しい排気量のエンジンが搭載されていた。どちらも1959年にフォード・アングリアに初搭載された「ケント」エンジンの派生型である。前輪駆動レイアウトに適合するように改良され、フォードが新工場を建設したスペインの地中海沿岸の都市にちなんで「バレンシア」と名付けられた。

初代フィエスタのカットモデル
初代フィエスタのカットモデル

ホットハッチの登場

排気量の大きい1117ccのエンジンでも、パフォーマンスはそれほど高くなかったため、スポーツモデルを好む顧客に届けようと、フォードはスーパースポーツと呼ばれるパワフルな1.3Lバージョンを設定した。これに続いて、第一世代で最もホットなフィエスタXR2が登場した。最高出力83psの1.6Lエンジンを搭載し、見た目も素晴らしく、速く走るのが好きな若いドライバーに大いにアピールした。

「XR」の名は、伝説的なRSほどではないにせよ、高性能を示すものであり、数字の「2」はエスコートXR3よりも小さいクルマであることを意味する。XR4は、フォード・シエラの高性能モデル(ただしコスワース以前)に使用された。

フォード・フィエスタXR2
フォード・フィエスタXR2

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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