【納車はいつ?】ミドシップ新型コルベット 右ハンドルが初めて誕生したワケ

公開 : 2021.05.22 05:45  更新 : 2021.10.13 12:04

新型コルベットはミドシップとして生まれ変わりました。GMでは珍しく右ハンドルが用意された背景も解説します。

60年以上の歴史ではじめてのミドシップ

text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

アメリカを代表するスポーツカーの「コルベット

「C8」と呼ばれる、2019年に発表された最新モデルは、その歴史においても革命的なクルマである。

シボレー・コルベット
シボレー・コルベット

最大のトピックはパッケージング。

コルベットは1953年にプロトタイプが公開された初代モデルから一貫してフロントエンジン・リアドライブとしていた。

しかし新型は、60年以上のコルベットの歴史においてはじめて、エンジン搭載位置をキャビン後方に移してミドシップレイアウトを採用したのだ。

理由はもちろん、運動性能向上である。重心を車体後方とすることで物理特性が有利になり、旋回性能が高まるのだ。

ミドシップ化は既定路線だった?

今にして思えばだが、コルベットの開発陣は30年以上前からミドシップ化を視野に入れていたに違いない。

たとえば1990年に発表されたコンセプトカーの「CERVIII」はコルベットとは名乗らないものの、明らかにコルベットを意識したフロントマスクを持ちつつ、エンジンをキャビン後方へ搭載したミドシップだ。

シボレー・コルベット
シボレー・コルベット

また、その前年となる1989年に発表された「コルベット・インディ」はミドシップの4WD。

市販車離れした雰囲気のいかにもコンセプトカー然とした車両ではあるが、こちらは「コルベット」という名前が付いているのが興味深い。

いずれにせよ、コルベットのミドシップ化は常に描かれていたプランだということが推測できる。

最新のコルベットでは、ついにそれを実現したということだ。

世界を見回しても、フルモデルチェンジを機にエンジン搭載位置をフロントからキャビン後方へ移す例は量産車ではほぼ聞いたことがない。ルノートゥインゴくらいではないだろうか。

それは、エンジン搭載位置の変更によりクルマのキャラクターを変えてしまうことであり、その「キャラ変」により従来のファンが離れてしまうことを危惧しているからだろう(乗用車では居住スペースや荷室容量など実用性が変わってしまう懸念もある)。

ネーミングにある軽自動車が影響?

コルベットのフルモデルチェンジに関して、メカニズム面においてはもう1つ見逃せない変化がある。

それはMTが廃止されたことだ。

スズキ・ワゴンRスティングレー
スズキワゴンRスティングレー    スズキ

「C7」と呼ばれる先代モデルは、7速MT、6速AT、そして8速ATと3タイプのトランスミッションを用意していた。しかし新型は8速DCTに一本化。コルベットにおける3ペダルMTの歴史は幕を閉じたのだ。

新型コルベットは、そのミドシップ化を記念するかのようにネーミングにも変化が起きた。

本国などでは「コルベット・スティングレイ」を名乗るのである。

「スティングレイ」とは、1963年デビューの2世代目コルベットに採用され、その後1976年目まで使われていたサブネーム。それが正式に復活したのである。

ただし、日本では用いられず、日本の車名は従来どおり「コルベット」である。

その理由はなぜか?

理由は明確で、商標権の問題である。

「STINGRAY」はスズキの軽自動車(こちらのカタカナ表記は「スティングレー」)に使われていて商標も登録されており、日本国内では他メーカーが自由に使うことができないからだ。

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

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