【家宝になったフィアット】ジアコーサの傑作 フィアット128 エンジンも宝石級 後編

公開 : 2021.06.13 05:45  更新 : 2021.07.27 14:44

トリノ生まれのファミリーカー、フィアット128。サビにも負けず、一家で40年以上乗り継ぐ走行距離6667kmの1台を、英国編集部がご紹介します。

固着していたランプレディのエンジン

text:Alastair Clements(アラステア・クレメンツ)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
フィアット128を長年大切に乗り続ける、サイモン・ハックナル。「父はキャンピングカーのフィアット・アミーゴを購入。特別な週末にも便利なクルマでしたから、128の出番はますます減少しました」

「128は祖父のガレージの隅に保管され、1980年代後半に少し走って以降、出てこなくなりました」。テッドはジェットエンジンの開発技術者で、危険がつきまとう環境にあった。中皮腫を患い、1999年にこの世を去ってしまう。

フィアット128 1300CL(1977年/英国仕様)
フィアット128 1300CL(1977年/英国仕様)

「父はジェットエンジンの耐熱材として、アスベストを塗っていました。温度が上昇するとアスベストが剥がれ、飛散するんですよ」。ハックナルが苦しそうな表情を見せる。

「父が亡くなってから、クルマを見に行きました。エンジンは固着。地元のガレージへ持っていくと、ピストンがサビていることがわかりました。ボア加工で、一回り大きいピストンを組む必要があったんです」

「車検を通してしばらくすると、タイミングベルトがコマ飛び。カムのタイミングが狂いました。再びエンジンのリビルトですよ」

しばらく128は眠っていたが、母が介護施設へ移ることになり、昨年にハックナルは再びガレージへ向かう。「実家を売却することになったのですが、一時解雇になったタイミングと重なり、フィアット128の問題も一緒に片付ける丁度いい機会になりました」

ハックナルは自身で128の復活を目指したが、ほどなくフィアットの専門ショップ、ミドルバートン・ガレージに作業を依頼した。「一見状態は良さそうに見えましたが、多くの問題が隠れていたんです」

ボディ以外はボロボロだった128

「エンジンは再び固着し、ブレーキも不動。ダンパーからはオイル漏れ。エンジンとブレーキは動くようにできたものの、自身での再起は困難だとすぐにわかりました」。苦笑いするハックナル。

「ミドルバートン・ガレージの技術者は見事でしたね。必要な部品は交換しつつ、できるだけ現状維持で作業してくれています。完全にオリジナル状態を保つことを、目標にしていました」

フィアット128 1300CL(1977年/英国仕様)
フィアット128 1300CL(1977年/英国仕様)

以前、タイミングベルトがコマ飛びした時に、バルブも変形していたことが判明し交換。カムプーリーとウォーターポンプも新調され、オルタネーターはオーバーホールを受けた。

フィアット128は乾燥した温かいガレージに保管され、第2世代として追加されたプラスティック製のホイールアーチ・モールのおかげで、ボディの状態は良かった。だが、それ以外はボロボロだったという。

「排気マニフォールドからマフラーエンドまで、排気系は完全に駄目でした。ブレーキディスクにキャリパー、ホース類も交換。サスペンションブッシュも、すべて新しい部品に置き換わっています」

スチール製のホイールは再塗装され、新しいピレリ・チンチュラートが組まれている。「オリジナルはミシュランXですが、合うサイズがありません。ホイールはきれい過ぎるので、少し光沢を鈍らせたいと思っています」

レストア開始から5か月後、2020年11月にフィアット128はハックナルのもとへ戻ってきた。無念にも母は、作業終了の1週間前に92歳で他界。仕上がった128へ乗せることはできなかった。

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