【家宝になったフィアット】ジアコーサの傑作 フィアット128 エンジンも宝石級 後編

公開 : 2021.06.13 05:45  更新 : 2021.07.27 14:44

イタリア車らしい威勢のいい排気音

フィアットの工場を出てから40年以上。当時の姿を保つ128を目の当たりにしている事実に興奮する。「父はタバコを吸いませんでしたが、まれに葉巻に火は付けていました。その灰が灰皿に残っていて、掃除せずに残してあります」

「クルマが戻ってきて初めて運転した時は、思わず泣きましたね。1977年の頃のように、新鮮な体験でした。結局ほとんど運転しませんでしたが、父が愛していたクルマですから」

フィアット128 1300CL(1977年/英国仕様)
フィアット128 1300CL(1977年/英国仕様)

仮に家族の思い出が詰まっていなくても、真新しい状態のクラシックの運転は、とても特別なものだ。1970年代らしいブラウンのダッシュボードに、ブルーのトリムが組み合わされ、グラスエリアが広く車内は開放的。

ソフトで大きめのシートに座ると、ミニのようなドライビングポジションに落ち着く。ステアリングホイールは一風変わった2スポーク。威勢のいい排気音は、いかにもイタリア車らしい。

走り始めると、エンジンは期待通りに活発。滑らかに高回転域まで吹け上がり、元気いっぱい。ストロークの長い4速MTの変速感は正確。スルスルと快適に100km/hの巡航状態に移してくれる。

ステアリングホイールは低速域では重たいものの、速度が乗れば軽くなる。初期の前輪駆動車らしい、トルクステアもない。タイヤはボディ四隅にレイアウトされ、コーナーへ飛び込む姿勢も整っている。

クルマ全体のフィーリングがタイトでソリッド。新車時のメーカーの狙いが、そのまま残されている。ガレージに長年眠っていたことで少しカビ臭いのが、1977年との大きな違いだろう。

歴史の中の存在になってしまった傑作

ちなみに彼の息子も、自身の128スペシャルを所有しているという。フェイスリフト後のシリーズ1で、今でも一般道で元気に過ごしている。

英国レスターシャーの郊外の道を、真新しいフィアット128で駆け回る。1969年に欧州カー・オブ・ザ・イヤーの審査員へ与えた驚きを、充分に想像できる走りだ。現代的でスポーティ。ボクシーな見た目とは、相容れない。

フィアット128 1300CLとサイモン・ハックナル
フィアット128 1300CLとサイモン・ハックナル

英国ではアレック・イシゴニスがミニを発明したが、デザインの合理性を追求したダンテ・ジアコーサは、フィアット128を残した。しかし彼のマスターピースともいえるクルマが、歴史の中の存在になってしまったことが残念に思える。

今でも多くの人を楽しませている、アイコン的なミニとは大きな違いだ。努力を重ね、家族で乗り継ぐハックナルの128を除いて。

一家の家宝ともいえるピピン・レッドのフィアット128は、ジアコーサの傑作として、イタリアンな美声を英国人へ聞かせてくれる。新車当時のままに。

フィアット128(1969〜1985年)のスペック

価格:2208ポンド(新車時)/1万ポンド(152万円以下/現在)
生産台数:77万6000台
全長:3856mm
全幅:1590mm
全高:1420mm
最高速度:144km/h
0-97km/h加速:14.6秒
燃費:14.0km/L
CO2排出量:−
車両重量:823kg
パワートレイン:直列4気筒1290cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:60ps/6000rpm
最大トルク:9.8kg-m/3200rpm
ギアボックス:4速マニュアル

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