日産スカイライン350GTハイブリッド・タイプP

公開 : 2014.04.08 22:50  更新 : 2017.05.29 19:27

■どんなクルマ?

日産を代表するスポーツセダン&クーペであり、日本でもっとも熱狂的なファンを持つといってもいいクルマがスカイラインである。初代モデルの登場は1957年。当時は日産自動車ではなく、プリンス自動車が製造・販売する自動車として誕生した。それから半世紀以上にわたってスカイラインは生産され続け、最新世代となる今回のモデルは通算13代目にあたる。

スカイラインといえば、日本グランプリにおけるポルシェとの激闘を引き出すまでもなく、存在そのものが浪花節という印象があったけれど、それも過去のハナシ。V36型以降、つまりカルロス・ゴーン体制下となってからのスカイラインは、『北米市場を中心に展開されるインフィニティ・ブランドのミドルサルーン』というのが正しい表現だろう。その世界基準の高級サルーンをベースに仕立てた日本仕様が、スカイラインなのである。

その日本仕様も、モデルを重ねるごとに日本独自のデザインや風合いは薄れ、ついに最新モデルでは日産のエンブレムが消えてしまった。かわりにフロントグリルにはインフィニティのエンブレムが備わる。日産のようで日産でない、しかし車名は日本国内専用の『スカイライン』を名乗るクルマ。どうしたって営業サイドの意向が強く働いているんだろうなぁ……と思ってしまう。

車名をはじめソフト面はともかくとして、ハード構成はかなり魅力的だ。北米ではインフィニティQ50として販売されるが、日本に導入されるのは3.5ℓV型6気筒エンジンに1モーターを組みあわせたハイブリッドのみ。このパワートレインは、フーガ・ハイブリッドに搭載されるものとほぼ同じだ。各種装備の違いによる3モデル展開でそれぞれFRと4WDの駆動方式が用意されており、計6モデルのラインナップとなる。車両価格は4,624,560円〜5,695,920円で、かつてのミドルセダン/クーペとしてのスカイラインは完全に影をひそめた。メーカーが目指す『欧州製高級セダンと互角以上に渡り合える』域に、価格帯もほぼ達している。

■どんな感じ?

もはや世界を舞台に走りまわるスカイラインは、ボディサイズも完全にグローバルスタンダード。全長4790×全幅1820×全高1440mmの車体は、車格をふたつくらい上に感じさせるほどのボリュームだ。しかし現代のクルマとしては驚くほどノーズは薄く、そして低くまとめられており、切れ上がったヘッドライトと合わせてシャープな印象を感じさせる。高級サルーンとはいえ主役は後席じゃなく、あくまでもスポーティなドライバーズ・セダンという開発陣の意気込みの現れだろう。

運転席に座り、小指から薬指〜中指と包むように持つことを促される独特の小径ステアリングを握りながら走り出すと、最新スポーティセダンとしてのスカイラインらしさはすぐに体感することができる。新型スカイラインには各種の制御系を切り替えられる「ドライブモードセレクター」が装備されており、これを「スタンダード」から「スポーツ」に切り替えると、ステアリングのパワーアシストは減少して重厚感とクイックさの増したハンドリングに変化する。この制御はパワートレインにも及んでおり、スロットルに添えた右足に少し力を込めるだけで、大柄な車体をまったく感じさせない加速力を見せてくれる。

その加速力をはじめとした運動性能は、スカイラインの名前を関するだけあって圧倒的だ。ハイブリッドならではの力強いゼロ加速に加え、3.5ℓV型6気筒のトルクが後押しする中速域でのキック力は素晴らしい。今回の試乗車はパドルシフトが備わらないグレードだったが、それでもスロットルのON/OFFとステアリング操作だけで、かなりのペースで走れてしまう。前述のステアリング形状はペースを上げれば上げるほど手になじみ、左右の手とノーズの動きがリンクしてくるように感じられる。

■「買い」か?

半世紀以上にもわたって生産され続け、モータースポーツをはじめ様々なフィルドで活躍してきた日本を代表するセダンが「スカイライン」だ。その車名を冠するクルマとして○か×かという議論は、ファンひとりひとりの心の中に答えがあることであり、誰も結論をつけることができないだろう。しかしながらハイブリッドシステムを軸にした強力な運動性能、そして車両全体を統合制御するドライブモードセレクターの存在は、いわゆる高級セダンとは一線を画した高級スポーツセダンとしてのプライドを感じさせる。

さらに世界初の装備となる「ステアリング・バイ・ワイヤ」システムは、言葉どおりワイヤ(電気信号)によってタイヤへ向きを変える信号を送る機構。これまでのようにステアリングシャフトは直結されておらず、あいだにクラッチを挟むことで様々な制御を可能にしている。スポーツやエコ、スタンダードといったハンドリングの味付けだけでなく、走行レーンの保持やゆくゆくは自動運転技術にも繋がるだろう注目の技術だ。

装備の内容を細かくみていくと、約500万円という車両価格にも納得がいく。スタイリングは各人の好みが大きいだろうけど、内装の質感などはライバルとされる欧州製高級セダンとも互角以上の仕立てだろう。ハイブリッドシステムの恩恵は、燃費面というよりほとんどパワー面において享受されているけれど、ワインディングを含めた試乗トータルで12km/ℓを記録しているから、3.5ℓV6としては優秀だ。願わくば、使用ガソリンがレギュラー対応であれば……とは思うけれど。

そんなスカイライン=インフィニティQ50には、今後さまざまな追加モデルが設定される動きがある。なかでも注目は、2014年4月より中国市場で発売される2ℓ4気筒ターボの存在だ。ドイツのメルセデスと共同開発されたこのユニットは、もちろん3.5ℓV6+ハイブリッドより合計出力は劣るものの圧倒的に小型軽量で、価格設定も安くなるといわれている。

その4気筒ターボユニットが、日本仕様にも追って搭載されるというウワサがある。4気筒ターボを搭載したスカイラインといえば、かつて後期型が「鉄仮面」の愛称で親しまれたR30型を思い出す人も多いだろう。新型のハンドリング性能に、軽量小型なターボ・エンジンの組み合わせは、想像しただけでも胸が高鳴る。日本のスカイライン・ファンにとっては、そちらこそが本命といえるかもしれない。

(text:佐橋健太郎 photo:花村英典)

日産スカイライン350GTハイブリッド・タイプP

価格 5,002,560円
0-100km/h加速 4.9秒
燃費 18.4km/ℓ
乾燥重量 1770kg
エンジン V型6気筒3.5ℓ + モーター
最高出力 306ps/6800rpm + 68ps
最大トルク 35.7kg-m/5000rpm + 29.6kg-m
ギアボックス 7速オートマティック

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