MスペックのMはミドルハースト? スカイラインGT-Rで成功した男(2) レザーシートはロールス・ロイス製

公開 : 2024.05.19 17:46

英国では、GT-Rに関して右に出る者はいないアンディ R32型でBTCCを勝利 R33型とR34型の輸入を牽引 Mスペックはミドルハースト日産のM? 英編集部が彼と4世代の物語をご紹介

辛口のジェレミー・クラークソンも絶賛

モータースポーツでの活躍と同時に、グレートブリテン島の一般道にも、R32型日産スカイラインGT-Rは増えていった。「ジャンスピード・レーシングが当初は輸入していたのですが、途中で停止し、自分たちの方へ依頼が集まるようになりました」

「注文主は各地に散らばっていたので、レースで遠征する度に、納車するGT-Rも運んでいたんです。スカイラインで、ビジネスが成り立つようになっていきました」。ミドルハースト日産を営む、アンディ・ミドルハースト氏が振り返る。

日産スカイライン GT-R(R33型/1995〜1998年/英国仕様)
日産スカイライン GT-R(R33型/1995〜1998年/英国仕様)

GT-Rに魅せられた彼は、公道用として、真っ白なR32型を所有している。マニアから譲り受けた珍しいVスペックとのことで、BBSのアルミホイールにブレンボのブレーキが組まれている。

日産ヨーロッパは話題を集めるため、1995年に次期R33型のGT-Rを輸入。BBCトップギアという人気番組のキャスター、ジェレミー・クラークソン氏へ貸し出した。

「辛口のクラークソンも、絶賛でした。その頃既に、自分は20台ほど輸入していたので、英国の正規ディーラーにならないかと日産から連絡をもらったんです。英国の規定では、単一車両承認制度という枠組みなら、最大100台まで輸入可能なんですね」

「最終的に1997年から1998年にかけて、R33型GT-Rを100台販売しました。そのすべての整備も引き受けています」

Mスペックはミドルハースト日産のM?

正式な輸入前に、アンディは英国の自動車試験場、ミルブルックで公式テストを実施。日本仕様に設定される速度リミッターを解除し、180km/h以上で連続走行させた状態を確かめた。

「温度計を各部にセットし、日産の社員を助手席に乗せて、オーバルコースを全開で20分走行。最高速度は時速160マイル(257km/h)まで出ました。しかし、ワイパーは動かず、エアコンはストップ。ルーフは、空気の摩擦で温度が上昇していました」

日産スカイライン GT-R(R33型/1995〜1998年/英国仕様)
日産スカイライン GT-R(R33型/1995〜1998年/英国仕様)

アンダーステアは、R32型と変わらなかった。「バンクコーナーで、外側の壁から1mくらいのところを走り続けました。15分後に、日産の社員が止めるよう命じましたが、わたしは無視しました。死ぬ危険は確かにありましたが、残り5分だけでしたから」

「走行後、日産の技術者がデータを確認し、こんな状態で運転していたなんて馬鹿げている!と叫んでいましたよ」。これを受け、英国仕様のR33型の生産が決まった。車両識別番号(VIN)も、日本仕様とは異なるものが割り当てられた。

エンジンオイルに加えて、デフとトランスファーのフルードにも専用のクーラーを装備。内装には、オプションでコノリーレザーが設定された。

アンディが続ける。「レザーシートは、ロールス・ロイスへ持ち込んで仕立ててもらっていました。次のR34型では、レザーシートが標準に。日本仕様のMスペックも、コノリーレザー張りでしたね」

「Mは、日産の技術者だった水野さんのイニシャルだといわれています。でも、ミドルハースト日産のMかも知れませんよ」。と彼が笑う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ベン・バリー

    Ben Barry

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

スカイラインGT-Rで成功した男の前後関係

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