ルーフSCRへ試乗 NA 4.0Lフラットで510ps 1250kgのカーボンボディ 前編

公開 : 2022.01.14 08:25  更新 : 2022.04.14 16:59

歴代の911へ対する、ルーフからの熱烈なラブレター。ほぼ新開発といえる510psのRRマシンを、英国編集部が評価しました。

独自のタブシャシーにカーボンボディ

1988年に、アルファ・ロメオ164のプロカーというレーシングカーが作られた。見た目は4ドアサルーンの164だが、取り外せる専用のボディカウルをまとった、V型10気筒をミドシップしたまったく別物のレーサーだった。

このルーフSCRも、似たようなクルマだとお考えいただければわかりやすい。ポルシェ911にしか見えない美しいシルエットを湛えているが、共通している部分は殆どない。

ルーフSCR(欧州仕様)
ルーフSCR(欧州仕様)

基礎構造をなすのは、マクラーレンにも似たカーボン・コンポジット素材によるタブシャシー。ルーフ社独自のもので、重さは88kgしかないという。

サスペンションは、プッシュロッド構造のダブルウイッシュボーン。一番近いポルシェを探すと、唯一、1988年にル・マン優勝を果たした911 GT1が存在するだけだ。

大人受けしそうなダックテール・スポイラーを備えた、964や993ライクな低いボディも、ルーフ社オリジナルのカーボンファイバー製。シュツットガルトで作られた911と、共有するパネルは一切ない。

ルーフ社がこれまで手掛けてきた独創的なチューニング・ポルシェを、ご存じの方も多いと思う。だがSCRは、従来のルーフとはまったく異なるモデルだといえる。

このSCRは、ルーフ社の代表を務めるアロイス・ルーフ・ジュニア氏が追い求める、究極のリアエンジン・パフォーマンスカーが体現されたモデル。ドイツ南部、ファッフェンハウゼンの工場で製造され、1台のお値段、実に77万ポンド(約1億1935万円)なり。

3.6Lメツガー・ユニットを源流に510ps

間違いなく高価なクルマだが、施された技術力も不足なく大きい。シンガー社がレストモッドする964ベースのDLSでは、100万ポンド(約1億5500万円)を超える値段が付いているから、この手の市場では法外な金額とはいえないだろう。

惜しみない情熱が注ぎ込まれたSCRで、最もポルシェ911に近いといえる要素の1つが、8700rpmまで回る水平対向6気筒エンジン。ブロックは社内で鋳造されているものの、設計自体は997 GT3用の3.6Lメツガー・ユニットを源流としている。

ルーフSCR(欧州仕様)
ルーフSCR(欧州仕様)

度重なる試行錯誤を経て、最高出力とエンジンとしての個性、費用対効果などのバランスを考慮し、排気量は4.0Lがベストだと判断されたという。増やされた容積に対応するため、アグレッシブなカムシャフトと、レース仕様のECUも採用されている。

もちろん、すべてはクルマのコストに反映はする。だが、日常的な乗りやすさが犠牲になってはいない。

オーバースクエアな寸法のシリンダーが与えられたブロックを覆うヘッドは、ルーフ社のオリジナル。チタン製のコンロッドや鍛造ピストンなども同様だ。そこへ、ポルシェ997 RSR用のクランクシャフトが組み合わされているという。

その結果、得られた最高出力は510ps/8270rpm。パワフルだが、2022年では驚くほどの数字ではないかもしれない。最新のBMW M3 コンペティションも、同等の馬力を発揮している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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