ルーフSCRへ試乗 NA 4.0Lフラットで510ps 1250kgのカーボンボディ 後編

公開 : 2022.01.14 08:26

歴代の911へ対する、ルーフからの熱烈なラブレター。ほぼ新開発といえる510psのRRマシンを、英国編集部が評価しました。

上質でシンプルな車内に、良好な運転姿勢

ルーフSCRを運転するうえで重要なポイントとなるのが、グラスエリアの形状が993型のポルシェ911と同一であること。車内空間はタイトながら、開放感があり運転席からの視界はとても良い。

コニャック・レザーで仕立てられたダッシュボードには、シンプルなアナログメーターが整然と並ぶ。ステアリングホイールはモダンなデザインだが、スポークにボタンなどは一切ない。

ルーフSCR(欧州仕様)
ルーフSCR(欧州仕様)

ドライビングポジションは、最新の992型911 GT3ほど自然ではない。テストドライバーのステファン・ローザー氏の要望でボスが長く、ステアリングホイールを握りやすい。背もたれが起き気味だが、バケットシートとペダルとの位置関係も良好だ。

インテリアは、いかにもルーフ的。オリジナルの911のデザインを尊重しつつ、高度な技術を持つ職人による手仕事で、ディティールにまでこだわってある。レザー張りの内装パネルの裏側には、ボディ構造と一体となったロールケージが隠れている。

アスファルトを進み始めると、角のない全体のまとまりに驚かされる。アクセルペダルの角度に対しエンジンは敏感に反応するが、数年前に試乗したプロトタイプのように、背筋が凍るような過激さは鳴りを潜めている。いたって滑らかに、回転数が上昇していく。

電動油圧式のパワーステアリングは、驚くほど軽快で繊細。現代のポルシェよりレシオが低く、ナーバスさはない。それでいて、コーナリング時にリアタイヤをなだめるのに、充分な素早さも備えている。

軽さが生む数え切れないメリット

自信を持って、迫るコーナーを制覇できる。路面が濡れていたから、ステアリングのコミュニケーション力は充分に確かめられなかったが、道幅いっぱいに使ったタイトなコーナリングでも緊張はしなかった。

フラット6をレッドライン手前まで回しシフトアップすると、グッドイヤー・イーグルF1 スーパースポーツRは耐えきれず空転する。即座に、ベーシックなトラクション・コントロールが介入し、エンジンを絞る。スタビリティ・コントロールは備わらない。

ルーフSCR(欧州仕様)
ルーフSCR(欧州仕様)

車重は軽く、コーナリング中のグリップ力はウェットでも非常に高い。今日のような雨がちの天気なら、5段階の調整式ダンパーは最もソフトな状態にしておくと良いだろう。

乗り心地は引き締まっているが、グランドツアラー的なしなやかな洗練性も両立させている。路面状況を正確に感じ取れるだけでなく、路面に追従し落ち着いている印象だ。

車重1250kgという軽さのメリットは、数え切れない。回頭性に中間加速、減衰力、グリップ、快適性。そして、クルマとしての素性。リアエンジンながら、マクラーレンのような流暢さを獲得できている。

さらに、珠玉の自然吸気4.0L水平対向6気筒エンジンが、一生をともにしたいと思わせる。回転域を問わず、吹け上がりは痛快なほどにシャープ。アイドリングからレッドラインまで、3段階の変化も楽しめる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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