ヴィンテージ・サウンドに包まれる タルボ・ラーゴT26 GSL パリ製の4.5L直6 後編

公開 : 2022.07.23 07:06

今はなきフランスのメーカー、タルボ・ラーゴの遺作の1つとなったT26 GSL。英国編集部が貴重な1台をご紹介します。

日本から輸入し英国でレストア

今回ご登場いただいた、シャシー番号1110008のタルボ・ラーゴT26 グランド・スポーツ・ラーゴ(GSL)は、1954年製。8番目に製造されたGSLで、6月にフランスのボナル氏という人物へ納車されている。

オリジナルのボディカラーはブラックで、クロームメッキのワイヤーホイールに、ベージュのレザー内装が与えられていたようだ。フロントフェンダーに開けられたエアベントを備えるGSLは、全体の半数以下だと考えられている。

タルボ・ラーゴT26 GSL(1953〜1955年/欧州仕様)
タルボ・ラーゴT26 GSL(1953〜1955年/欧州仕様)

近年になり、グレートブリテン島の中東部、ビーミッシュに拠点があるカー・バーン社が日本から輸入したタルボ・ラーゴで、その歴史についてはほとんどわかっていない。レストアの過程で、素晴らしい状態が保たれてきたことは確認できている。

ボディカラーは、デュボネット・ロッソと呼ばれる深みのあるレッドに仕上げられた。レザーも全面的に張り直され、セイヨウトネリコ材が用いられたドアの修復には、かなりの時間が費やされたという。

写真で見るより実物は全高が高く、スタイリングは戦後でも、そのベースは戦前だということがわかる。ボックスセクションのシャシーを覗き込むと、軽量化のために穴開き加工されているのが見える。それでも、強度が最優先だったことは間違いない。

ラグジュアリーな内装にスポーティな計器類

巨大なドラムブレーキを冷やすエアスクープや、冷却フィンの付いたアルミニウム製サンプなど、細部まで丁寧な設計が施されていることも確認できる。トランスミッションは巨大だが、車内空間はあまり影響を受けていない。

バンパーに付いた縦長の角張ったオーバーライダーや、緩やかにカーブを描くルーフライン、丸みを帯びたフェンダー付近の造形など、ボディには見飽きない個性がある。サイドまで大きく湾曲したリアガラスは、3分割になっている。

タルボ・ラーゴT26 GSL(1953〜1955年/欧州仕様)
タルボ・ラーゴT26 GSL(1953〜1955年/欧州仕様)

しっかり膨らんだルーフラインのおかげで、リアシート側にも問題なく大人が座れる。頭上にも足もとにも、空間には余裕がある。

リアシートを折りたためば、荷物を沢山詰める空間が生まれるし、スペアタイヤを降ろせば荷室も巨大。その奥に、90Lの大きなガソリンタンクが載っている。

フロントシートにはサイドサポートがほとんどなく、フラットでワイド。4スポークの大きなステアリングホイールが、ドライバーの膝の上に来る。ウッドパネルのない、レザーで覆われたダッシュボードに、イエーガー社製の白い盤面のメーターが並ぶ。

ラグジュアリーなグランドツアラーに配された、スポーティな計器類に違和感がなくはない。ライトやワイパーなどの機能は、キャラメル色のノブで操作する。クラクションとヘッドライトは、ステアリングコラムの左側から伸びたレバーが受け持つ。

右側のレバーは、プリセレクター・マニュアルのセレクター。リバースが上で、4速が下。ポントモルトは、ニュートラルを意味する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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