ラ・フェラーリのシャシーx812のV12 フェラーリ・デイトナ SP3へ試乗 五感で堪能する跳ね馬 後編

公開 : 2022.08.03 08:26

ラ・フェラーリのカーボン製タブに、812 コンペのV12を融合。壮観なボディに包まれたフェラーリを、英国編集部が試乗しました。

21世紀前半におけるマラネロのベスト盤

フェラーリ・デイトナ SP3を少し詳しく見ていこう。21世紀前半における、マラネロのベスト盤と呼べる内容になっている。シャシーはラ・フェラーリのために開発された、カーボンファイバー製のモノコック。これだけでも傑作だ。

エンジンは812 コンペティツィオーネ用の6.5L自然吸気V型12気筒。それらを、言葉を失うほど美しいスタイリングのボディワークが包んでいる。

フェラーリSP3 デイトナ(欧州仕様)
フェラーリSP3 デイトナ(欧州仕様)

筆者もカメラマンも、デイトナ SP3に接近するほど圧倒されてしまった。ビートルズのコンサートを生で見た観衆のように。きっと市街地を走ったら、大勢の人が追いかけてくるに違いない。

斜め上方に開くドアは、内側に大きく弧を描いている。乗り降りはしにくい。実際、頭をぶつけてしまった。

シートに座ると、インテリアの造形に過剰なところはなく、むしろ控えめ。大胆ではあるが、シンプルでもある。鏡面仕上げのパネルで覆われていたり、未来的な処理が点在している、ということはない。

170万ポンド(約2億8390万円)のクルマの内装としては、充分ではないかもしれない。だが、極上の体験を得られる場所ではある。

フェラーリでは過去最強となるV型12気筒エンジンが、キャビンのすぐ後ろでガソリンを爆発させる。最高出力は812 コンペティツィオーネより10ps高い、840psが主張されている。

ラ・フェラーリの方がハイパワーだったが、あれはハイブリッドのアシストが加わった場合。F1用のV12ユニットでも、大排気量のデイトナ SP3の馬力には届かない。

ゆったりとした速度で壮大な幸福を感じる

2席のシートは、ラ・フェラーリと同様にキャビンと一体。レバーを引くと、ペダルの位置を前後に調整できる。ほかのフェラーリも、この仕様で良いように感じてしまう。

丁度いいドライビングポジションに落ち着き、ゆったりとしたスピードで走らせると、壮大な幸福を感じる。他の台数限定の超高級エキゾチックとは異なり、可能な限り高速で走らせている時に、満ち足りた気持ちになるクルマではない。

フェラーリSP3 デイトナ(欧州仕様)
フェラーリSP3 デイトナ(欧州仕様)

乗り心地は許容範囲。洗練されているといっても構わないが、極太のピレリ・タイヤが小石を跳ね上げる度に、ホイールアーチからバラバラと音が聞こえてくる。

ボディはかなりワイドで、全幅は2050mm。サルト・サーキットから公道へ出ようかという最中、飛び出してきたジャガーCタイプと接触しそうになった。相手が気付いて、クルマにも縁石にもタッチせずに済んだが。

閑散としたフランス・ル・マン郊外の一般道を流す。公道では確かめようがないほど恐ろしく速いものの、マクラーレン720Sが積むV8ツインターボほど、爆発的なパワフルさはない。

7250rpmで最大トルクを発揮する自然吸気ユニットは、しっかり回すことで真価が発揮される。6000rpmからリミッターが掛かる9500rpmまで、崇高な内燃エンジンの体験が待っている。

V型12気筒の咆哮は、徐々に怒り狂ったハードエッジな音質へ変化していく。過去のフェラーリが仕上げたサウンドの方が、聴き応えはあるかもしれない。それでも、デイトナ SP3のものも引けを取らない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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