ポルシェ911 GT3xGT3カップ 9割の類似性を確かめる 抜群のシャシーバランス 前編

公開 : 2022.10.08 09:45

最新のカレラカップ向けレーシングカー、GT3カップ。9割がた近いという公道用GT3と、英国編集部が比較試乗しました。

992型911 GT3とGT3カップの類似性とは

人間のDNAはチンパンジーのものと99%の共通性がある、という話を耳にすることがある。豚とは98%、バナナとは60%程度だとか。

ポルシェによれば、カレラカップに出場するレーシングカー、最新の911 GT3カップと公道用911 GT3には、90%の類似性があると説明する。マニアならまったくの別物だ、と冷笑するかもしれないが、同社GT部門の戦略としては真面目な主張のようだ。

イエローとブルーのポルシェ911 GT3カップと、ホワイトのポルシェ911 GT3
イエローとブルーのポルシェ911 GT3カップと、ホワイトのポルシェ911 GT3

それでは、その90%の類似性とは何なのか。10%の違いで、どんな差が生まれるのか。これが今回、英国編集部が設定した比較テーマだ。

親切にも、こんな疑問へ答えを導くべく、ダッカムズ・ユアサ・レーシング・ウィズ・レッドライン・チームが協力に応じてくれた。最新の911 GT3カップと、911 GT3を直接乗り比べることが実現した。まずは、この場を借りてお礼を申し上げたい。

ちなみに、同一車種で競われるワンメイクGTカー・チャンピオンシップのポルシェ・カレラカップGBは、2022年で20周年を迎える。ワンメイクレースでは英国最速がうたわれ、2003年から英国ツーリングカー選手権のサポートレースとして開催されてきた。

これまでの19シーズンを通じて、6名の勝者がプロのレーシングドライバーとしてのステップアップを掴んだ。ル・マンで優勝したニック・タンディ氏もその1人。英国モータースポーツの登竜門の1つとしても機能している。

水平対向6気筒エンジンは基本的に同一

さて、もちろんレーシングカーは公道を走れない。比較場所は、グレートブリテン島中部に位置する、ドニントン・パーク・サーキットに設定された。

このダッカムズ・ユアサ・チームは、ポルシェ・カレラカップGBで過去に優勝経験を持つ。2022年シーズンは、取材時点で3位にランクインする強豪といえる。

ポルシェ911 GT3カップ(カレラカップGB仕様)
ポルシェ911 GT3カップ(カレラカップGB仕様)

その好成績に貢献しているのが、カレラカップGBジュニアのチームドライバー、アダム・スモーリー氏。サーキットで911を可能な限り速く走らせる方法に関しては、熟知しているといっていい。今回は彼にもご同席いただいた。心強い限りだ。

まずは、冷静に2台を観察するところから始めよう。事前に知っておくべきは、最初に開発されたのが公道用の992型911 GT3だということ。これを経て、911 GT3カップが仕上げられている。

GT3カップの4.0L水平対向6気筒エンジンは、基本的に公道用のGT3と同一。吸排気系のみがレース専用品へ交換されている。2022年のグッドウッド・フェスティバルでお会いした、ポルシェGT部門のアンドレアス・プレウニンガー氏は次のように話していた。

「公道用のGT部門とモータースポーツ部門は、本質的には同じ部署といえます。レーシングカーとしても競える堅牢さや信頼性を備えたモデルを開発することは、お互いにとって利益のあるものなのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ニール・ウィン

    Neil Winn

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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