可動域がわずかに狭まった、いかにも硬質なパドル・シフトで変速を試みると、さらに楽しめる。ただし厳密にいうと、変速の動作はやや遅い。それにバシッといった感覚よりも、ぬるりとした感触の方が強めである。

タイヤが温まったのを確認してコーナリング・スピードをあげてみる。ノーズの重みは感じるが、コーナー上でも安定している。ややアンダーが強めだが、オン-リミットのレスポンスはモダンカーの常識を超えている。

エイペックスに向けて矢のように突き進む。そこからじわりとコーナリング・フォースが高まった際のステアリングの重みは繊細に増し、脱出時には後輪にたっぷりとパワーが伝わる。タイヤ接地面がどのような状況にあるかも手にとるようにわかる。

トラクション／スタビリティ・コントロールは、控えめだが確かに効く。よって、挙動がニュートラルな状態になっても、ハンドリングの味わいが損なわれることはない。安心して、全開で楽しめる。

■「買い」か?

サーキット専用のおもちゃを買い換えるに値するか? もし私が911 GT3 RSを持っていたら、そのまま乗りつづけるはずだが、アウディR8のアッパー・グレードや日産GT-R NISMO、ブラック・シリーズのAMGを持っていれば、M4 GTSの下取りにだすだろう。

ポルシェに喰いつくサーキットカーをBMW Mは作りあげた。スタンダードなM3／M4が欲していたものをM4 GTSは一挙に手にした。光り輝くパーフェクトなこのモデルを、だれが要らないというだろうか? 「買い」といわずに何といおう。

BMW M4 GTS

価格	£120,770(1,872万円)
最高速度	306km/h
0-100km/h加速	3.8秒
燃費	12.0km/ℓ
CO2排出量	199g/km
乾燥重量	1510kg
エンジン	直列6気筒2979ccツイン・ターボ
最高出力	500ps/6250rpm
最大トルク	61.1kg-m/4000-5500rpm
ギアボックス	7速デュアル・クラッチ