広がる喜び BMW M8コンペティション・コンバーチブルに試乗 624psは過剰気味

公開 : 2019.11.17 09:50

優れた走行性能を備えたBMW 8からルーフを外せば、広がるのはグランドツアラーとしての楽しさ。クーペと比較しても走行性能や快適性も大きく損なうこともない、と英国編集部は評価しています。ポルトガルで試乗しました。

最も高価なモデルの最も高価な仕様

text:Richard Bremner(リチャード・ブレンナー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
現在のBMWのラインナップで最も高価なモデルの、最も高価な仕様となるのがM8コンペティション・コンバーチブル。4シーターのボディに624psのV8ターボエンジンを搭載し、0-100km/h加速は3.4秒という素早さだ。

Mドライバーズ・パッケージを選択すれば、リミッターが解除され最高速度は305km/hに到達する。しっかり断熱材も仕込まれたファブリック・ルーフをリアデッキに収納させれば、最高速度は少し遅くなるが、それでも劇的な体験であることは変わりない。

BMW M8コンペティション・コンバーチブル
BMW M8コンペティション・コンバーチブル

ドライビングモードに応じて、M5のように巨大なトルクを後輪のみへ届けることもできる。スリル満点の後輪駆動のドライビングマシンに変えることも可能だ。

ゴージャスなキルティング加工されたレザー張りのシートに腰掛けた充足感は素晴らしい。だが運転し始めの複雑さが、ドライバーを悩ませるかもしれない。

ステアリングホイールにはM1とM2と書かれた、赤く染められたレバーが見える。複雑にレイアウトされたセンターコンソールには、Mモードとセットアップと書かれたものと、マフラーのアイコンが書かれたボタンが並ぶ。

説明書を読み込まなければ、その役割の理解は難しい。ガラスが美しいシフトレバーの操作パターンは、一般的ではないから慣れが必要となる。

興奮を抑えきれない高速コーナーの加速感

スタートボタンを押せば、M8の中核をなすものが何かを思い返させてくれる。強烈なパワーを連想させる、V8の勇ましい響きが轟く。長く伸びる直線でアクセルを踏み込めば、圧倒的な勢いで即座にスピードを乗せていく。

ブレーキはバイワイヤで機能し、2010kgもある車重を不足なく効果的に減速させる。この車重にも関わらず、M8は強力なグリップ力を伴って機敏に走る。だがサーキットでもなければ、ボディサイズは常に意識させられるだろう。

BMW M8コンペティション・コンバーチブル
BMW M8コンペティション・コンバーチブル

滑らかな路面のサーキットでは、この巨大なM8の良さに気付かされる。若干軽量でボディ剛性も高いクーペならなおさらだけれど。長く伸びる高速コーナーを、威圧的に加速させながら抜けていく体験には興奮を抑えきれないはず。

最大トルクは76.3kg-mもあるのに、タイヤサイズも大きいから、タイトコーナーでも手を焼くことはない。ボディの向きをクルリと変えさせれば、あとは猛烈に脱出していくだけ。フロントタイヤが加速を手助けしてくれ、次のコーナーまでに確実に速度を上げていく。

これが後輪駆動状態になったら、どんな走りになるのだろうか。Mダイナミックモードを選択すると、フロントタイヤへの駆動力の伝達はなくなり、コンピューターによる姿勢制御の手助けもなくなる。

サーキットでの楽しさが際立つようになるが、グリップ力を超えるパワーだから、間違いなくドライバーの運転技術も問われてくる。リアタイヤのスライドは、安心感を感じるほどに予測可能な挙動を示してくれる。

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