【シトロエンらしさの復活】なぜ好調? 100周年、愛すべき現行モデル シトロエンC3

公開 : 2019.12.10 06:10  更新 : 2022.02.24 19:27

100周年の今年、シトロエンC3が売れているという。オリジナリティあるスタイリングと乗り味が人気。そこで若き日にシトロエンの洗礼を受けた上野氏が試乗。その魅力の要因を探ってみました。

シトロエンの洗礼

これまで様々なメーカーのあらゆるモデルに乗ってきたが、クルマに対する価値基準をひっくり返す強烈なインパクトを受けたのがシトロエンだった。

小生意気な小僧だった筆者は高性能なスポーツモデルがすべてという考えだったが、ヒトを快適に移動させることの理想を追い求めたシトロエンの世界を知ってしまうと、いつしか気になる存在になっていた。

シトロエン日本法人は、2019年の販売が4000台を超える勢い。C3は、どのクルマとも似ていないスタイリングと洒落たアクセントが魅力。
シトロエン日本法人は、2019年の販売が4000台を超える勢い。C3は、どのクルマとも似ていないスタイリングと洒落たアクセントが魅力。

筆者にとってシトロエン初体験は1975年のことで、バイト先にあった「GS」だった。ちなみにこのGSは1975年の「1220クラブ」で、当時でも珍しかったCマティック右ハンドル仕様。ボビンメーターではなくレアなアナログ・タイプだった。

街中から高速、そして雪道などのあらゆる状況でシトロエンに接してみると、柔らかなシートは乗る者をやさしく包み込んでくれ、常にフラットな乗り心地を提供してくれる脚とのコンピネーションにより、駿足ではないがどこまでも走って行ける気にさせてくれた。それでいてキャビンは大人4人がゆったり乗れ、真四角で超広大なラゲッジスペースは何でも飲み込んでくれ、すべてが目から鱗だった。

このころにシトロエン界の大御所である四日市の椙山先生を取材する機会に恵まれる。産婦人科医を務める椙山先生だけに、シトロエンのヒトを包み込むような乗り心地は「子宮の中の胎児」と例えた専門医ならではの説明に、このような見方があるのかと大きなインパクトを受けたことを今も鮮明に覚えている。

その後もシトロエンのある生活は続き、CXのセルフ・センタリング・ステアリングに驚き、コイルばねながらハイドロを思わせる優しさを持つヴィザの乗り味に感激し、硬くなったとはいえBXのしなやかな脚と、どのモデルにも独自の世界観と合理性が受け継がれていることに感動した記憶がある。

しかし21世紀に入るとシトロエンにもグローバル化の波が押し寄せて、かつてのゆったりとした乗り味やオリジナリティが希薄になり、ちょっと縁遠い存在になってしまった。

“らしさ”の復活

仕事柄クルマ漬けの日々を送っているが、すべてのクルマに乗っているわけではない。ある日シトロエンC3に試乗する機会に恵まれた。

先代のC3はシトロエンらしさが薄かったこともあり、あまり期待せずに乗ったのだが、走り出した瞬間にかつての感触が五感を刺激したのである。これまでのシトロエンと違うぞ、と。

合理性を突き詰めた直3ターボは110psを発揮。ボディサイドのエアバンプ(プロテクター)にあしらわれた赤がチャーミングだ。
合理性を突き詰めた直3ターボは110psを発揮。ボディサイドのエアバンプ(プロテクター)にあしらわれた赤がチャーミングだ。

ここで私的判断基準による独断偏見のシトロエンC3インプレッションをお伝えしたい。

2016年にデビューした現行C3は、他のどのクルマとも似ていないエクステリア・デザインをまとう。ウエストラインから下が深くドッシリとした存在感を放ち、シトロエンならではといえるオリジナリティを主張する。

とくに上下2段にヘッドランプとクリアランス・ランプを配したデザインは独創的で他のメーカーにない魅力だ。またC4カクタスから始まったエアバンプはよりスマートに進化し、アクセントの色遣いもあり、BセグながらCセグ並みの存在感を放つ。

特筆したいのがボディサイズだ。どのメーカーのクルマもモデルチェンジの度に大きくなっているが、実際のところ裏路地や自宅の駐車スペースは以前のままなのである。

こうした中でC3は全長3995mm、全幅1750mm、全高1495mmと程良い大きさで、出先の駐車場でも取り回しに困らないサイズが日常使いで見逃せないポイントだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記