【ワンオーナー】米製スーパーカー「ヴェクターW8」に7956万円 RMサザビーズ・オークション

公開 : 2020.01.24 05:50  更新 : 2021.10.11 09:28

アメリカン・スーパーカー「ヴェクター」。デロリアンと同様に、夢を追い続けた創始者の熱意から生まれたクルマです。超レア車だけにオークションで7956万円を記録しました。

幻のアメリカ製スーパーカー

text:Kazuhide Ueno(上野和秀)
photo:RM Sotheby’s

ヴェクターというクルマをご存知だろうか。1971年にデトロイトのビッグ3で経験を持つ自動車産業界のベテランであり、大きな夢を抱くジェラルド・ワイゲルトによりデザインを手掛ける会社として設立された。

ワイゲルトはフェラーリランボルギーニポルシェを打ち負かすことを目指し、1979年に初のプロダクションカーとしてヴェクターW2をデビューさせる。しかし資金繰りに窮しW2は市販されることはなかった。

RMサザビーズ・アリゾナ・オークションで7956万円の値が付いたヴェクターW8
RMサザビーズ・アリゾナ・オークションで7956万円の値が付いたヴェクターW8

しかしワイゲルトの夢は途絶えることはなく、資金の目途が立った1988年にW2での経験をもとに、より進化させたW8を送り出し自動車メーカーの仲間入りを果たす。

正式な社名をヴェクター・エアロモーティブと称するだけに、航空機グレードのコンポーネントで構成されていたのが特徴だった。

余談だがヴェクター社は1992年にインドネシアのメガテック社に買収され、創始者ワイゲルトは経営から身を引くことになり、実質的な活動にピリオドが打たれた。

なおメガテック社は、1993年には当時経営に行き詰まっていたランボルギーニ社も買収している。

ヴェクターW8ツインターボとは

1988年に発表されたヴェクターW8は、ワイゲルト氏を始めとする自社開発陣による設計で、シャシーはフォーミュラ・マシンで採用されていたアルミハニカム製モノコック。

ボディパネルはケブラーとカーボンを用いるなど航空機譲りの最先端テクノロジーで構築されていた。

RMサザビーズ・アリゾナ・オークションで7956万円の値が付いたヴェクターW8
RMサザビーズ・アリゾナ・オークションで7956万円の値が付いたヴェクターW8

スタイリングはウェッジを基調としたスーパーカーにふさわしい尖ったデザインで、フェラーリやランボルギーニを引き離す強烈なインパクトと存在感を放っていた。

しかしパワートレインの開発まではできず、ミドに横置きで搭載されるのはシボレーの5.7L V型8気筒OHVユニットを5973ccまで拡大。

ヴェクターの手によりチューニングが施されるとともに、ギャレット製ツイン・ターボチャージャーを組み合わせ最高出力は625hpを発揮した。

組み合わせられるギアボックスは大パワーに耐え入手が容易なGM製ターボ・ハイドラマティック425型3速トルコン式オートマテック。

もともと前輪駆動のオールズモビル・トロネード用に開発されたものを転用。スタイリングやシャシーは先進的だったが、パワートレインははっきり言ってローテクなアメリカ車そのものだった。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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