【手頃な市民のクルマの代表】フォルクスワーゲン・アップ1.0 廉価グレードに試乗

公開 : 2020.03.22 10:20

最も安価なフォルクスワーゲンが、WLTP値への対応に合わせてマイナーチェンジを受けました。EVの普及も進む中で、変わらず最高のシティカーの1台といえるのでしょうか。英国で評価しました。

市民のクルマを体現したモデル

text:Kris Culmer(クリス・カルマー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
今選べるフォルクスワーゲンの中で、最も安価なモデルがアップ。1.0Lのアップは、フォルクスワーゲン、市民のクルマという社名を体現したモデルだといえる。つまり、ヴォルフスブルクの方向性が正しいことを示す、重要なモデルの1つとなる。

8年前にアップが登場した時、英国では7995ポンド(107万円)で購入できた。だが2016年のフェイスリフトと2020年のWLTP値への対応に合わせたアップデートを経て、最も安価なアップでも、英国価格は1万2440ポンド(167万円)へと上昇している。

フォルクスワーゲンUp! 1.0(英国仕様)
フォルクスワーゲンUp! 1.0(英国仕様)

実用的な5ドアの場合、1万2840ポンド(173万円)とさらに上昇。インフレが価格変更の主な原因だが、理由はエントリーグレードの仕様変更によるところもある。従来はテイクアップと呼ばれるグレードがあったが、それもなくなった。

英国のすべてのアップに標準装備されるのは、レーンキープアシストと、フロントとリアのカーテンエアバッグ、スマートフォンと連動するインフォテインメントシステムなど。

ダッシュボードには、ガッチリとしたスマートフォン用クレドールも追加されている。おそらく多くのユーザーは、スマートフォンの画面を用いるはず。大きなモニターを追加し、価格を上げる必要もない。

エアコンやフロントのパワーウインドウ、アルミホイールも、もちろん装備。15インチホイールも悪くないが、価格に合わせて16インチや、アップGTIでは17インチも選べる。

小柄で軽量な期待通りに軽快に走る

エンジンは、純EVのe-アップとアップGTIを除き、英国では60psの1.0L 3気筒ガソリンエンジンのみ。日本では75psとなる。ブルーモーションと呼ばれる、アイドリング・ストップと回生ブレーキ機能を採用している。

従来は75ps版と90ps版が英国でも選べたが、おそらくWLTPテストをパスするのに苦労したのだろう。できれば、もう少し力のあるスペックに残ってほしかった。

フォルクスワーゲン・アップ1.0(英国仕様)
フォルクスワーゲン・アップ1.0(英国仕様)

60psの場合、目一杯頑張っても、0-100km/hの加速に要する時間は14.9秒。高速道路での合流には、少しの努力が必要となる。流れの速い英国の高速道路では、アップの肩身が少々狭いのもうなずける。

しかし、シティカーとして重要な都市部でのパフォーマンスに不足はない。1速からの加速は充分に活発で、TSIターボエンジンかと勘違いするほど。2速と3速でも、シャープに走れる。

乗り心地は感心するほど良い。継ぎ接ぎだらけの路面でも、落ち着きがなくなることはない。大きな起伏では、柔らかいサスペンションで大きく揺れることはあるけれど。

コーナリング時のボディロールも大きいが、幅185の細身のフロントタイヤが生み出すグリップ力は高く、大きな問題とはならない。ホイールベースは2420mmと短く、オーバーハングもほぼないアップ。車重は1tを切り、期待通りに軽快に走る。

都市部の速度域で走っていても、飛ぶように交差点を曲がれるのが気持ちいい。ステアリングは軽く正確で、心地いい。狭い角や駐車場でも扱いやすい。反面、速度域が上がると曖昧さが出てくる。

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