【オリジナルペイントのHRG】自らボディを作った赤いHRG 1500を復元 後編

公開 : 2020.08.15 16:20  更新 : 2020.12.08 08:35

HRGエンジニアリング社最後のスポーツカーが1500。その中の6台はムーア&タイ、今のヘースティングズ・モーターシート・メタルワークス社がボディを手掛けました。貴重な1台を、当時のボディ職人が今も大切に乗っています。

30年ほどかけて探したHRG

text:Jack Phillips(ジャック・フィリップス)
photo:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
英国のコーチビルダー、ムーア&タイ社は、多くの個人的なプロジェクトも引き寄せた。ジェンセンのオーナーで、ランボルギーニ風のボディが欲しい人や、ジャガーXK140のシャシーに、古いMG風ボディを載せたい人まで。

「トップレベルの職人が、わたしが欲しいモノを正確に生み出してくれた」 とMG風ボディを望んだオーナーが、新聞の取材に答えている。

HRG 1500(1955年)
HRG 1500(1955年)

4シーターのMGも生み出したほか、数多くの修復にも携わった。このHRG 1500のボディも手掛けたアランEJジェンナーの芸術的センスを活かし、巨大なマーリン・エンジンを積んだハンドリー・スペシャルも。

2017年、息子のイアンがコーチビルダーとしての歴史を振り返るきっかけを作った。「30年間ほど、HRGを探していました。定期的にクラシックカーの出品をチェックしていただけですが」

「ある日、ネットを見てみると、ビンゴ。父が手掛けたクルマの1台を見つけたんです。出品者は、強気の値段を要求していました。購入までに、数千ドルほど値下げ交渉をしています」

「このクルマを理解しているのか、出品者が訪ねてきたので、経緯を説明しました。希望価格からは大きく外れていましたが、その価値はあるということでもありました。父を驚かせようと考えていたのですが、わたし自身も興奮しましたよ」イアンが振り返る。

親子で楽しむレストア作業

「クルマが来ると、新しいマスター・シリンダーと燃料系を取り付け、すべてをクリーニング。エンジンは無事に掛かりました。SUキャブレーターのフロートの1つには穴が空いていたので、直してあります。オリジナル状態の高さには驚きました」

「われわれが追加したのは、アルミニウム製のシートベースだけ。欠品状態だったので、オリジナル部品を制作した孫の方に、再制作してもらいました。リアバンパーは北米仕様のモノですが、しばらくこのままにしておこうと思います」

HRG 1500(1955年)
HRG 1500(1955年)

「父は運転できませんが、レストアは楽しんでくれています。わたしも大好きです。父は、次にフロントフェンダーを作る計画のようです。原型はまだクルマに残っていますから。リアフェンダーも」

「このクルマをもとに、アイルランドのオーナーのために、1セット作ることができました。ラジエター・シェルとボンネットも、再制作できますね」

ヘッドライト・バーについている小さなバッジは、アメリカのオーナーズクラブのもの。スポットライトは、地元のジャンクショップで見つけた、当時モノの本物だ。

幸運にも、HRG協会がクルマの歴史資料を保管している。この赤いHRG 1500はシカゴのジャック・ウェリーが最初のオーナーだった。1961年にオーナーが変わり、その後ピーター・キーンが3番目のオーナーとして、50年以上も大切にしてきた。

海岸線の道でHRG 1500のエンジンを始動する。すぐに目覚め、落ち着いたアイドリング状態に入った。

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