【滅びる運命?】マニュアル・トランスミッション 減少傾向強まる メリット、生き残る道は

公開 : 2020.11.25 11:20

マニュアル車の需要は年々減少しつつあります。英国では今年、オートマの販売数が初めてマニュアルを超えました。環境性能や自動運転など、取り巻く環境も厳しくなる中で、マニュアルに未来はあるのか、検証します。

クルマと人の物理的なつながり

text:AUTOCAR UK編集部
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

英国の自動車市場は2020年1~9月の9か月間で、大きな節目を迎えた。マニュアル・トランスミッション(MT)よりもオートマチック・トランスミッション(AT)を搭載したクルマの方が、初めて多く売れたのである。

自動車業界団体ソサエティ・オブ・モーター・マニュファクチャー・アンド・トレーダーの調査によると、英国における同期間の新車販売の54%をATが占め、初めて50%の壁を破ったという。

メルセデスのマニュアルシフト
メルセデスのマニュアルシフト

以前からMTの需要低下は販売データに表れていたが、過去3年間では特に顕著だ。昨年、AT車は販売台数の49%を占め、2018年の43%から上昇。10年前は販売の5分の1しか占めていなかった。

また、今月初めには、メルセデス・ベンツが欧州の大手自動車メーカーとして初めて、MT車の生産を完全に停止することを発表した。

メルセデスは、内燃機関のラインナップを大幅に削減することも含めたコスト削減策の一環として、MT廃止の実施を決定。広報担当者によると、MTは2030年までに段階的に廃止されるという。

メルセデスで現在、MTを設定しているのは、AクラスGLACクラスを含むコンパクトモデルのみ。来年登場予定の新型Cクラスでは、完全に廃止されると予想されている。

MTは、ドライバーとクルマを物理的につなげるものとして、長い間エンスージアストに愛されてきた。伝統的なトルクコンバーターよりも優れた燃費を実現し、価格も比較的安価だ。

しかし今では、誰でも使いやすいATの需要と、正確にコントロールできるデュアルクラッチ・トランスミッション(DCT)の台頭により、MTを凌駕するようになってきている。

「ATは、パワーウィンドウのように当たり前の機能になりつつある」と英国の市場調査会社ジェイトー・ダイナミクスの調査員、フェリペ・ムノスは言う。

減りつつあるマニュアルのメリット

今年英国で販売されたAT車のトップ5を見れば、人気の高まりは明らかだ。ジェイトーのデータでは、1位はBMW 3シリーズで、同時にPHEV(330e)の販売トップでもある。2位はEVのテスラモデル3。3位と4位はハイブリッドのトヨタカローラC-HRで、5位のメルセデス・ベンツAクラスもPHEV(A250e)では3位にランクインしている。

メーカー同士がCO2排出量の削減で激しい競争を繰り広げる中、MTが犠牲になっている。コンピューターが変速のタイミングを調整して燃費を稼げるようになったため、MTの経済性の魅力は薄れている。

BMW 3シリーズ
BMW 3シリーズ

セアトレオンフォルクスワーゲン・ゴルフなど、マイルド・ハイブリッドシステムを搭載したフォルクスワーゲン・グループの新型車には、DCTが用意されている。

セアトの開発責任者であるマーカス・キースによると、ATの方が経済性を考慮した設定が簡単だという。

「MTはシフトチェンジに時間がかかるため、ロスが大きくなってしまいます。開発チームはノーと言いました。今ではかなりの数のAT車を販売しているからです」

ATはまた、アクセルを踏まない状態での惰性走行など「エコ・イノベーション」技術の追加が可能で、欧州連合(EU)の厳しい排出ガス規制に対応しやすい。さらに、交通事故防止機能などの半自動運転システムにも適応する。

しかし、すべてのメーカーがMTをあきらめているわけではない。韓国のキアは、マイルド・ハイブリッドシステムと惰性走行機能を導入しながら、MTを維持する方法を見つけた。

キア・シードとリオに設定されているクラッチ・バイ・ワイヤ式インテリジェント・マニュアル・トランスミッション(iMT)は、48Vのスターター/ジェネレーターを使用して、ドライバーが選択したギアを維持したまま惰性走行後にエンジンを再始動させる。

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