【雪が降らなくても必要?】冬用タイヤについて知っておくべきこと ポイントは気温 ドライブ前の準備は

公開 : 2020.11.29 11:45

冬用タイヤは買うべきか。寒い季節になると、多くのドライバーを悩ませるのがスタッドレスへの交換ですが、「雪が少ない地域なら不要」は誤解です。タイヤについて知っておくべきこと、今からできる準備についてご紹介します。

そもそも冬用タイヤとは?

text:Dan Prosser(ダン・プロッサー)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

雪が降って交通網が麻痺してしまうのは、決して天候のせいだけではなく、ドライバーの準備不足のせいでもある。今回は、冬用タイヤについて詳しく見ていく。果たして装着する価値はあるのだろうか。

寒冷地では議論の余地はないだろうが、雪の少ない地域では冬用タイヤが何のためにあるのか、またなぜ冬用タイヤを装着しなければならないのか、いまだに多くのドライバーが誤解している。

雪が少ない地域でも交換はお勧めしたい。
雪が少ない地域でも交換はお勧めしたい。

実は、冬用タイヤは「雪」や「氷」に対応するためだけに設計されているわけではない。周囲の気温が7度以下になると、たとえ路面が乾いていたとしても夏用タイヤは本来の性能を発揮できなくなる。冬用タイヤは低温でもグリップ力を発揮し、夏用よりも安全性が高いのだ。

およそ11月末から3月の間は、夏用タイヤよりも冬用タイヤの方がグリップ力が高いことはほぼ間違いないだろう。

では、どのような仕組みなのだろうか?

夏用タイヤとは具体的に3つの点で違いがある。1つ目は、トレッドパターンに多くの溝(サイプ)が刻まれていることだ。

第2に、シリカを多く含むコンパウンドで作られているため、氷点下でも柔らかくしなやかな状態を保つことができる。一方、夏用タイヤのゴムは、極寒の環境下では非常に硬くなってしまう。路面をつかむことができず、つるつると滑るようになる。

最後に、冬用タイヤのゴムブロックは、走行中に振動するように設計されているため、付着した雪は振り落とされていく。一方、夏用では雪や氷が詰まってしまい、使い物にならなくなってしまう。

ただし、夏場に冬用タイヤを使用できない法的な理由はないが、お勧めすることはできない。温暖な気候では、夏用タイヤよりも早く消耗してしまう。つまるところ、お財布を痛めてしまうのだ。

さらに、夏用よりもグリップ力やトラクションが弱いため、安全性が低くなってしまう。冬用タイヤは、気温が上がり始めたら外して、次の冬に備えて保管しておくのがベストだ。

四輪駆動なら夏用でも平気?

四輪駆動車なら夏用タイヤでも大丈夫、というわけではない。

四輪駆動でも冬用タイヤが必要であるということを検証するために、冬用タイヤを装着した前輪駆動のシュコダ・イエティと、夏用タイヤを装着した四輪駆動のイエティを比較してみた。

シュコダ・イエティで雪道テスト。その結果は。
シュコダ・イエティで雪道テスト。その結果は。

雪に覆われた路面では、停止状態から時速50kmに達するまでの加速は四輪駆動車の方が速く、明らかにトラクション面で優位に立っていた。とはいえカーブや交差点に差し掛かるとどうなってしまうのか。

ブレーキをかけるとき、四輪駆動車は前輪駆動車に比べて何の優位性もない(車重が重くなる場合が多いので、実際には不利になる)。時速32kmから停止するまでのブレーキングテストでは、冬用タイヤの前輪駆動車の方が夏用タイヤの四輪駆動車よりもはるかに短い距離で停止した。

コーナリングテストでも、結果は似たようなものだった。夏用タイヤを履いた四輪駆動車は、コーナリング時のグリップ力を表す横加速度が0.17Gしか出なかったのに対し、冬用タイヤを履いた前輪駆動車は0.23Gに達した。

この差は意外と大きい。冬用タイヤは夏用タイヤよりも雪上でのコーナリンググリップが35%も多いということを示している。

こうしたブレーキングやコーナリング性能の違いが、事故を回避できるか、大事故を起こすかの分かれ目になっている。

言うまでもないが、冬季のベストな組み合わせは、冬用タイヤを装着した四輪駆動車である。たとえ前輪駆動車であっても、冬用タイヤを装着すれば走行性は高くなる。今乗っているクルマに冬用のゴムを装着した方が、新しいオフロード車に買い替えるよりもずっと安く済むのだ。

ドイツをはじめとする北欧諸国では、冬の間は夏用タイヤを外すことを法律で義務付けられている。適用範囲は観光客にも及ぶ。大まかに言うと、ドイツのドライバーは10月から復活祭(4月)までの間は冬用タイヤに交換している。

販売価格はブランドやサイズによって大きく異なるが、一般的には、夏用タイヤと同じくらいと思っていいだろう。

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