【ハレとケの見事なバランス】フォルクスワーゲン・ゴルフRへ試乗 8代目 320ps+四輪駆動 前編

公開 : 2020.12.25 10:25

Rのエンブレムに320psと四輪駆動が与えられた、最もパワフルなゴルフ。動的性能と快適性とが高次元で見事にバランスし、フラッグシップ・ハッチバックにふさわしいとする英国編集部。スタッドレスタイヤでの試乗となりました。

四輪駆動に320psの4気筒ターボ

text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
わたしたちは今、ホットハッチの1つのピークに生きていると思う。これほど多くの自動車メーカーから、幅広い高性能ハッチバックが選べた時代は過去になかった。2020年には、トヨタGRヤリスも加わった。

反面、際立って優れた1台を開発することは、簡単な作業ではないはず。上級志向のモデルでは特に。

フォルクスワーゲン・ゴルフR(欧州仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフR(欧州仕様)

フォルクスワーゲン・ゴルフGTIが誕生したのは1976年。ホットハッチの中で、特に長い歴史を有している。さらなる高性能を求めて、四輪駆動のゴルフR32が登場したのは2002年だ。

今回試乗した最新のゴルフRは、「R」のエンブレムが与えられはじめてから5世代目に当たる。四輪駆動のホットハッチというパッケージは18年間守られてきた。ヴォルフスブルクのフラッグシップ・ハッチバックと呼んでいいだろう。

その四輪駆動も、ハルデックス・マルチプレートクラッチを採用するシステムへアップデート。洗練度を高め、従来以上に効果的なメカニズムになっている。

まずはエンジンから見ていこう。このゴルフRが搭載するのは、フォルクスワーゲン製のEA888ユニットで、第4世代となる。基本的には先日ご紹介したゴルフGTIクラブスポーツと同じユニットだが、19psと2.07kg-mほど力強い。

最高出力320ps、最大トルク42.7kg-mを獲得し、量産版ゴルフとしては過去最もパワフルなモデルになった。ちなみに先代のゴルフRは300psと38.6kg-mだったから、動的性能として表れるのに充分な差がある。

サスペンションやブレーキもアップデート

トランスミッションはフォルクスワーゲン製の7速デュアルクラッチAT、DSGの改良版。フルードクーラーとソフトウェアが新しくなり、変速時間を短縮している。充分な需要がないとして、MTの採用は見送られた。

先代でも選択できたが、アクラポビッチ社製のチタン・エグゾーストはオプションで装着可能。パワーアップにはつながらないというが、標準のエグゾーストシステムより重量は7kgも軽い。また排気音も、ぐっと刺激的なものになる。

フォルクスワーゲン・ゴルフR(欧州仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフR(欧州仕様)

サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット式で、リアが4リンクのマルチリンク式。R用に再調整を受け、車高は通常のゴルフより20mm低くなる。

フォルクスワーゲン自慢のダイナミック・シャシーコントロール(DCC)として、可変レートダンパーを搭載。フロントタイヤ側では、ネガティブキャンバーが1.3度強められている。

アルミホイールは、Rの標準では専用デザインの18インチ。今回の試乗車には、オプションの20インチホイールにスタッドレスタイヤが巻かれていた。

これ以外にも変更箇所はまだまだある。ゴルフGTIと同じ強化版フロント・サブフレームに、クイックさを増した可変レシオ・ステアリングラック、2ポッド・キャリパーと大径ディスクが組み合わされたフロントブレーキなど。

ブレーキは、マスターシリンダーも専用品。従来より強化していながら、600g軽量に仕上がっているという。

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