【評価割れる】マツダMX-30 EV乗り味 「制御」で好き嫌い? EV版「人馬一体」の解釈

公開 : 2021.03.23 05:45  更新 : 2021.10.20 17:32

マツダMX-30 EVは「EVっぽくない」点において評価が割れます。マツダの提案した「人馬一体」を解釈します。

評価は賛否両論「EVっぽくない」

text:Satoru Uno(宇野智)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

2021年の正月明け、菅首相が「2035年には新車販売のすべてを電動車に」と明言し自動車業界のみならず、一般消費者にまで衝撃が走ったその約2週間後に、マツダ初の量産EV「MX-30 EVモデル」の国内発売が開始された。

筆者が試乗会にてマツダMX-30 EVに乗って感じたのは、EVらしくないエンジン車のような乗り味を感じる、とても素晴らしいバランスの取れた仕上がりだった。マツダの「人馬一体」のクルマづくりは、EVではこう解釈されたのか、と高く評価した。

マツダMX-30 EV
マツダMX-30 EV    マツダ

しかし、マツダ広報担当の1人は、「多くのモータージャーナリスト、メディア陣から高い評価をいただいた。ただ、厳しい意見も多く頂戴した」と語った。

どうやらMX-30 EVの評価は真っ2つに割れたようだ。厳しい意見にはどんなものが多かったのかたずねたところ、「EVらしくない走りがよくない、もっとEVらしい走りにしてほしい、という意見が多かった」とのこと。

つまり、MX-30 EVは、EVらしからぬエンジン車に近い走りであったことはおおむね全員が感じたことで、この「EVっぽくない」ところが 肯定派と否定派にわかれたのである。

EVの乗り味決める「制御」

MX-30 EVのインプレッションが賛否両論となった話をきいたとき、あらためて電気モーターとエンジンの特性の違いを自然と認識することになった。また、その違いは、EVの乗り味を決める重要な要素であることも認識させられた。

EVの乗り味を決める要素は大きくわけると2つだ。1つは、電気モーター出力の制御、もう1つは、音の制御だ。どちらも「制御」であることがミソ。

マツダMX-30 EV
マツダMX-30 EV    マツダ

電気モーターの出力特性は、理論上では0回転が最も強いトルクを発生、回転数が上がるにつれてトルクが下がっていく。電車が停止状態から発進し加速するとき、モーターの回転数が徐々に上がっていくのはこのためだ。

なお、現在の新しい電気モーターでは改良が進み、回転数が上がってもトルクが落ちにくいようになってきている。しかし、ガソリンエンジンのような高回転域で最高出力を叩き出すことは電気モーターにはできない。

また、出力の制御は、エンジンより電気モーターの方が非常にやりやすい。エンジンは燃料の量を調節することで出力を変化させているが、電気モーターは、電圧、電流の2つの要素を調節することで出力を変化させている。つまり、電気モーターのほうが調節点は多い。

電気モーターは徹頭徹尾デジタル信号のみで制御が可能である。したがって、制御の味付けによって、より電気自動車らしい乗り味にもできれば、エンジンのような乗り味にも変えることができる。

音については、圧倒的に電気モーターのほうが静か。また、エンジンに必要なトランスミッションはEVには不要なため、駆動系から発生するノイズも少なくなる。

EVで気になるのは、インバーターから発生する高周波音。この音がいかにも未来的なEVらしい音ではあるが、長時間乗るならば耳障りだ。そこで登場するのが、最新のノイズ制御技術。

ヘッドホンのノイズキャンセリングがかなり優秀になっていることをご存知の方は多いだろう。EVでもその技術が応用され、耳障りな音は、それを打ち消す周波数の音をスピーカーから発生させている。

さらに、EVパワートレインそのものから発生する音を変化させることも可能である。EVは音についても、制御のさじ加減1つで、いかようにもできるのである。

記事に関わった人々

  • 宇野智

    Satoru Uno

    1974年生まれ。前職はSE兼営業で副業が物書き。自動車ウェブメディア編集長を経て、2021年2月からフリー。現在の基礎はカタログ少年時代、食事中はTVを見るより諸元表を見ていたことに始まる。陸海空の乗り物全般と猫とカメラとガジェットをこよなく愛する。取材/執筆/撮影/編集はもはやライフワークに。結果、キャパオーバーで自爆すること多数。

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